30.そのとき、閃光が奔って
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掛け、精神を蚕食せよ!」
「フレイヤ嫌いここに極まれりだなお前は!!」
「……あのー、まずは倒れた人を看病する医者でも呼んだ方がいいんじゃ……」
脅威が去った以上は倒れた男性を看病するべきだろう、とレフィーヤは思った。しかし、よく見ると倒れた男性は既に周囲の人間によって看病されているようだった。二人が倒れた人を気にしなかったのは冷静に状況を見極めていたかららしい。
普段とは打って変わって心の底から楽しそうなブラスと呆れるアズ。一見して二人の関係はアズの好意の一方通行のようにも見えるが、なんだかんだで二人は本当の意味で友達らしい。でなければこんな状況でじゃれ合うようなことはしないだろう。
怪我人に振り向きもしないのは少し薄情な気もするが、それも冒険者としては必要な資質なのかもしれない――
「こ、こいつ死んでるぞ!!」
「おいおい嘘だろ……どこにも怪我してないじゃないか!何で心臓も呼吸も止まってるんだ!?」
「い………イヤぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
目の前で、人が殺された――その事実に初めて気付かされた一般人が恐怖から悲鳴を上げる。不安と恐怖は瞬く間に人々の間を伝播し、大きな喧騒となって周囲を覆った。
――死んでいる?
現実が受け入れられなくなるような言葉に、レフィーヤの頭が凍りつく。
ダンジョンでもなくこんな街中で、人が認識できないほどの速度で突然に、殺された。
ダンジョンでの人死にとは全く違う異次元の恐怖がレフィーヤの身体を金縛っていく。
もしも何かの運命が一つでも掛け違ってあれが自分の身に起きたとしたら、自分はロキやリヴェリア、アイズたちのいない、人生の中でも下らなくでどうでもいい場所で何の感慨もなくその一生を終えていた。
夢は夢で終わり、憧れにはどれほど手を伸ばしても届かず、ただ虚無の世界へと無感動に墜ちていく。そんな悍ましい未来が、すぐ近くにある――そう考えた瞬間、胸の奥からアズに感じるそれとも違った根源的な恐怖が湧き出た。
「ひぐっ………ッ!?」
「落ち着け」
思わず悲鳴を上げそうになったその瞬間――隣にいたブラスがレフィーヤの耳元で囁いた。
「まだ死んだかどうかは分からん」
何の根拠も感じられない言葉。なのに、ブラスの囁きにはどこか人を安堵させ、確信させるような柔らかさがある。こみ上げた感情が静まっていくレフィーヤを確認したブラスは、そのまま横を通り抜けて死者の骸に向かった。
「おい、どけ。俺がやる」
「はぁっ、はぁっ……!……え?な、何を……?」
「………そういえばこの世界には心肺蘇生法の概念がないんだったな」
どこか自分の迂闊さを呪うように頭を抱えたブラスは男を押しのけて死者の前に立った。
そして――死体の
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