30.そのとき、閃光が奔って
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まま遠ざかっていく。そっと目を開けたレフィーヤは、そこで初めて倒れかけた自分をブラスが受け止めてくれていた事に気付いた。こちらがエルフであることを意識してかどうかは分からないが、その手は体を支える最小限の部分に留まっている。
「………迂闊だぞ、レフィーヤ。冒険者なら自力でバランスを整えるか、そもそも事前に回避するくらいは出来るようになれ」
「あ、オーネストさ………じゃなくて、今はブラスさんか。その、ありがとうございます……」
「礼はいらん。それよりも隙を見せた自分を恥じろ。鍛えていればこの程度の衝撃で転倒しない筈だ」
「す、すみませんっ!」
どこか諭すように軽い叱咤を飛ばしたブラスの手に押されて立ち上がりながら、レフィーヤはちょっと落ち込んだ。注意されたことが悲しかったわけではなく、ブラスの指摘した点が痛いところを突いていたからだ。
曲がりなりにもレベル3であるレフィーヤは、強力な魔法を抜きにしても杖でその辺の魔物を撲殺する程度の筋力がある。しかし、いざ戦いとなると接近戦の経験不足が災いして咄嗟に反応できないことが多い。ダンジョン内では気を付けようと思っていたが、日常生活でこの有様では冒険者として気が緩んでいると言われても言い訳できない。
黄金仮面が物珍しそうにブラスを見る。
「お、珍しく他人に対しておせっかいな事言うのな」
「最近気付いたが、俺は意外とお節介焼きらしい」
「言われてみれば俺って滅茶苦茶おせっかい焼かれてる気がするな……この街に来てからずっと居候状態だし。まぁいいんじゃないか?情けは人の為ならず、めぐりめぐりて己が身のため……だろ?」
「ふん、確かにな。俺がやりたくてやっているのなら問題などなかろう」
仏頂面だったブラスが、アズに対して微かに微笑む。レフィーヤはその笑顔に思わず魅入られた。
(――オーネストさんってこんなに綺麗に笑える人なんだ……)
女性になっていることを差し引いても、その笑顔は吸い込まれるように美しい。
無愛想で無骨なオーネストの元に何故あれだけの人間が集まって来るのか、その一端を垣間見た瞬間だった。
その、刹那。
レフィーヤ達の目の前にいた男の身体に閃光と破裂音が奔り、倒れ伏した。
「え………」
事態が呑み込めずに呆然と倒れた男を見つめたレフィーヤの視界を、アズの背中が遮った。アズの手には既に鎖が握られ、ブラスも先ほどの笑顔を消して数本抱えていた剣の一本に手をかけて後ろを警戒している。
パリッ、と空気が『張る』ような錯覚。何かのスイッチがオフからオンへ、流れが動から静へ。目の一つも合わせないままに、二人は落ち着き払った声を交わす。
「ブラス、敵意は感じたか?」
「何も。詠唱らしいものもこの周辺
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