30.そのとき、閃光が奔って
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思っても脅威を感じても、手を出した際に返ってくるであろう反動を防げないのだ。何故なら、それらは極めて個人的に、散発的に、突発的に行われることだからだ。
そして何より、事実上のトップに君臨するオーネストという男は手を出すには危険すぎた。
個人であるが故に、彼は勢力図や力関係など考えない。『猛者』に手傷を負わせた圧倒的な暴力で敵を蹂躙し、暗殺や計略を正面から破壊し、自身を懐柔、利用しようとする者の甘言に決して耳を貸そうとしない。そして、この男は骨から肉が削げようが内臓が破裂しようが必ず生き延びて、手を出した相手に徹底的な報いを受けさせた。
こうしてゴースト・ファミリアはフレイヤ・ファミリアとは別の意味でアンタッチャブルな勢力となった。弱小ファミリアは彼から被害をこうむることを怖れて手を引き、有力ファミリアは「フレイヤ・ファミリアの対抗勢力になりうる」と判断して不干渉を徹底。そして一部のファミリアは彼と実質的な協力関係、または下部組織的な関係となって見えない戦力と化した。
そして2年前、突如として現れた『告死天使』という男がオーネストの『友人』になったことで、図らずともオーネストの立ち位置は盤石とも呼べる状態になった。『推定レベル7』と噂されたオーネストに並んだ、もう一人の『推定レベル7』。これを以てして、ゴースト・ファミリアはとうとう正面切ってフレイヤ・ファミリアと釣り合う戦力を持つと世間に認識された。
――ただし、実はそこに致命的な勘違いがある事を知る者は、少ない。
その勘違いは、ゴースト・ファミリアの一員でさえ深く考えないこと。
「――という訳です。気まぐれな貴方のことですから別に期待はしておりませんが、一応……ね」
「……貴方も食えない男よね。望んでいるのは事の解決ではなく、『事そのものを乱すこと』……貴方、事態を相手にもこちらにも予想出来ない方向へ持って行くために態と情報を拡散してるわね?」
「何を言うかと思えば――当然ですよ。わたくしはギャンブラーですよ?賽の出目が決まった勝負などする意味がない。もっと先が見えず、運任せで、何が起きるのか予測がつかないくらいが、面白いのです。とてもとても……ふふっ、面白いのですよ。フレイヤ様」
「そういう所も食えないわ、ガンダール。愉快犯のような顔をして、自分自身もその先の見えない荒波に笑いながら飛び込んでいく。見ている分には楽しいけれど、眷属には欲しくないタイプね」
バベル最上階で秘密の会談を開いた二人は、妖艶に笑う。
『ゴースト・ファミリア』はオーネストが動いた時に追従するのではなく、オーネストを中心に動いているだけだ。彼が波を立てずとも、彼に向かう波に気付いた者達は勝手気ままに動き出す。そして、行動の結果が必ずしもオーネストの為に
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