29.其の名は「告死」
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に憐みを感じるほどに――抵抗すら許されぬ竜の死は決定的だった。
そして、その竜の頭の上に『告死天使』はいた。
「君は……随分永く生きているようだね」
ぞくり――全身の毛細血管が凍りつくような、感情のこもらない冷たい言葉。
それは独り言のようであり、厳かに告げられる裁判の判決のようでもある。
「魔物という存在に生物的な寿命はない。理論上、倒されなければ永遠に生きていくことも可能だろう。そう――君たちの命は時間によって終わりを告げることが出来ない。人に当然に存在する『やすらかな死』は、生まれながらにして君たちには訪れない。だから――」
握る鎖は拒絶を許さず魂もろとも肉体を縛り付け、絶対不可避の運命が竜の上から迫る。
湛える表情は、微笑。ロキと共にいた時のそれよりずっと熱が無く、つめたく、なのに一度目が合えば離す事が出来ない程に、魅入られて。
『骸は虚無のゆりかごへ、御魂は無明に抱かれり』
汝に安らかなる死が永劫訪れず、生の価値を見いだせぬと言うのならば。
汝の生命を終わらせよう。いずれ訪れる凄惨なる最期を、今こそ齎そう。
『死は甘美にて優麗なれば、とこしえの 静寂こそ救いなれ』
死とは終焉。生に価値を生み出す世界との契約。生命の旅路がいずれ辿り着く場所。
それは万人に用意された出口であり、望んで辿り着くことが出来ないことは牢獄の苦痛でしかない。
『肯定せよ、望まれし滅亡――顕現せよ、内なる破滅』
誕生の喜びと黄泉路への旅立ちは、この世を生きた証。世界からの祝福。
しかして、汝は死の在り処を定められずに産み落とされた。
ならば――
『――死望忌願、汝は吾と共に在り』
世の理が祝福されぬ生を続けさせるというのなら、終わりという名の祝福を受け取るべきだ。
アズの背中から這い出るように、鎖で縛られた十字架を背に負った魔人が顕現する。
それまでのものとは比較にならぬほど怖ろしく、畏ろしく、本能が確信するほどに、それは『死』そのもので。紅い眼光でアズと共に竜を見下ろす姿は、絶対者のそれで。
奇妙な文字の描かれた包帯に覆われた掌が掴むのは死神の大鎌の如き巨大な大鎌。
その刃を見ただけで魂に冷たい刃を添えられた錯覚を覚える、絶対的な『死』。
その魔人が刃を振りかざす姿は、まるで昔に読んだ物語にいた『死神』そのもので。
「慈母に生み出されたこの魔窟に抱かれて――お休みなさい」
『????? ?? ?????――』
金属が切れる音一つなく、カイキノウ・ドラゴンの首が落ちた。
この日以来、レフィーヤはアズライール・チ
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