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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
29.其の名は「告死」
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られる率が高い。

 漆黒のコートを好んで着ている彼だが、細身長身に加えてあの『死』の気配のせいでどうしても『死神』の類を連想させる。使用する鈍色の冷たい鎖も罪人を縛るように見えるし、『背中の魔人』などを何の予備知識なく見ようものなら漏らしかねないほどの恐ろしさだ。
 何故か子供には好かれることが多いが、大人や多感な人は彼を見るだけで悲鳴を上げるレベルの存在である。

 しかして『背中の魔人』はアズ自身も多用することはない切り札の一つ。オラリオ内では一部の存在しかそれを目撃したことが無く、多くの人はそれを『アズライールの真の姿の事』か、もしくは『誇張されすぎた噂』だと聞いたことがある、といった程度の認識である。

 レフィーヤ・ウィリディスも当初はアズライールの噂を信じてはいなかった。
 確かに怖い雰囲気はあったが、そもそも彼と最初に出会ったのは彼が主神ロキと肩を組んで「仰〜げば〜涼〜しい〜♪」などと歌いながらホームまで帰ってきたとき。何故かものすごく意気投合していた二人の姿を見れば怖いどころか「この人もアホかな?」と微笑ましく思えるレベルの存在だった。

 その印象が覆ったのは、出会ってから間もなくしての事だった。


 ――ダンジョンに青銅の邪竜(カイキノウ・ドラゴン)と呼ばれる魔物がいる。

 第44層奥地の溶岩地帯付近に棲息する強力な大型希少魔物で、階層主を除けばダンジョン内でも五指に入る凶悪な敵としても知られている。特筆すべきは全身を覆った青銅の鱗であり、生半可な攻撃は青銅の防御によって防がれる上に鱗を飛び道具として発射してくることもある。全長20Mを越える巨体から繰り出される尻尾の薙ぎ払いと鱗の射出の二つだけで並みのファミリアはお手上げな程だ。

 そのカイキノウ・ドラゴンを、アズは一人で屠った。

 その時の光景を思い出すと、レフィーヤは今でも眠れなくなる時がある。
 あのオーネストがアズと共にダンジョンに潜っていると聞いて道すがら様子見にいったロキ・ファミリアを待っていたのは、紛れもなく処刑場の断頭台だった。

 既にそこに44階層の怪物としての威厳など欠片も存在しない。
 そこにいるのは、処刑を待つばかりの哀れな家畜だった。

 竜を象徴する巨大な翼、鋭い爪を抱えた手足、その胴体や頭まで文字通り全身を鎖に貫かれ、その姿は壁に磔にされた羽虫のように無残だった。時折拘束から逃れようと体を動かしては、貫いた鎖に体を抉られて鈍色が朱に染まる。
 冒険者に絶望と死を齎す青銅の処刑者であった筈の強敵がまるで道化のように蹂躙されていた。

『グガ、ガガガガガ……ッ、アアアアアアアアアア……!!』

 その瞳にあるのは自らが強者と驕ったことへの後悔と、ひたりひたりと近づく死の足音への恐怖。見る物
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