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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
29.其の名は「告死」
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っては「玩具」でしかない。

「理由を聞かせて頂戴?玩具であると断ずる理由を」
「簡単な話だ。あの魔剣は魔物を20匹ほど殺した所で折れた。対してあんたの打ったこの無銘の剣は100を越える敵を斬り殺しても刃毀れすらしていない。どちらが優れているかなど一目瞭然だろう」

 それは、オーネストに限らず最上級冒険者ならば誰もが同意する正論だったろう。
 魔剣の強さなど破壊力が見せるまやかしに過ぎない。本当の武器とは、数多の魔物を薙ぎ払い、攻撃を防ぎ、全力で振るい続けて尚折れることのない最高の相棒だ。たかが数十回振るっただけで呆気なく折れる剣と、派手さはなくとも常に自分の腕に応えてくれる剣――どちらが命を預けるに相応しいかなど考えるまでもない。
 肝心な時に剣として使えない魔剣という武器は、命を預けるに値しない。
 魔剣とは、根本的に剣としては欠陥品なのだ。

「そもそも魔法を放出する機能だけが頼りなら剣でなくとも問題ない。魔剣の技術を応用して魔法弾でも作ってカートリッジ式の銃でもこしらえた方が建設的だ。完成した所で俺は使わんがな」
「鍛冶屋泣かせの貴方らしい答えだこと………後半の話はともかく、前半の方は参考になったわ」

 自分がこの時代でどれだけ滅茶苦茶なことを言っているか自覚がないオーネストの発想にヘファイストスは頭を抱える。用事を済ませたオーネストは素早く詠唱をして『ブラス』となり、部屋のドアノブをねじって部屋の外に出て――ふと後ろを振り返った。

「魔剣を作ったどこぞの『クロッゾ』に伝えておけ。――『お前が魔剣だと思っているそれは真の魔剣ではない。魔剣を完成させたくば、まずは剣製を極めよ』……とな」
「オーネスト、それはどういう………いえ、まさか」

 ヘファイストスは理解する。理解してしまう。
 銃の話といい、昔からオーネスト発想がどこか飛び抜けている所があることは知っていた。その発想は時々革新的で、多くは異端的で、神でさえ舌を巻く卓越した着眼点を持っていた。だが、これは流石にヘファイストスも思い至らない発想だった。
 つまり、オーネストはこう言ったのだ。

 現代における『魔剣』という技術体系はそもそもにおいて完成していない、と。
 悔しければ固定観念の束縛を破って新たなステージに進んで見せろ、と。


 ――今のような不完全品ではない、新たな概念を内包した魔剣を鋳造して見せよ――と。


「それは……『真の魔剣』ではなく『新たな魔剣』の域に達せということ?魔剣製造という才能が生み出す技術を更に洗練、昇華させて……過去の先人たちが誰もが辿り着けなかった領域を開闢(かいびゃく)しろと?」
「そうとも言える。どちらにせよ、それを目指すかどうかは言葉を聞いたクロッゾ次第だ」
「――そう。オーネスト…
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