29.其の名は「告死」
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怒涛の接待地獄とスキンシップ地獄を超え、百を超える屈辱を甘んじ、千度も逃走を画策した。
しかし、耐えた。筋の通らない真似をするのは餓鬼の証拠。責任を取るのは大人の義務。
筋の通らない理論を必死に否定することで、オーネストはその役目を全うした。
そして――
「じゃあ、また来てね?」
「……ああ」
「次は剣の2,3本折ってもいいのよ?」
「……その必要があったらな」
「何ならお昼も食べて――」
「メリージアがいじけると面倒だ。やめておく」
「用事が無くても遊びに来て良いのよ?」
「………気が向いたらな」
「ハンケチ持った?」
「最初から持ってねぇ」
「これ、オシラガミ・ファミリア製のシルク100%ハンケチよ。貴方にあげるから使ってね!」
どっかで聞いたことのあるそのファミリアは、確か養蚕業をやっている生産系ファミリアだ。オラリオの高級仕立て屋はどこもこのファミリアからシルクや絹糸を仕入れ、オシラガミ・ファミリア自身も布製品を販売している。
これを貰って喜ぶというのはちょっと癪だが、そこいらの布きれとは比べるのもおこがましい手触りだ。これを受け取るまでにお小遣いよろしく色んなものを渡されたが、いい加減にこれで最後にしたい。
「………分かった。受け取る。だからいい加減にその手を離せ」
「だってぇ……離したらまた暫く会えないじゃない!何よ、ヘスティアの所には用事が無くても顔を出す癖に……」
「あんたが会うたびねちっこく引っ付いてくるのが嫌だからだ。ガキじゃないんだからこれ以上未練がましく駄々をこねるのは止めろ。朝っぱらからいい歳こいて牛歩戦術や時間稼ぎをしやがって………!」
その台詞はものの見事に昨日の自分にブーメランなのだが、ヘファイストスがオーネストより圧倒的に「いい歳」なのもまた事実。最後の握手とは名ばかりでまったく離れる気配のない掌をゆっくり引き剥がすと、ヘファイストスは名残惜しそう……というより物欲しそうな目でこっちを見つつも素直に引き下がった。その肌は気のせいか昨日よりツヤツヤしている気がした。養分を吸い取られた気分だ。
「じゃあ、俺はもう行くぞ」
「あっ、ちょっと待って!もう一つだけ重要な事を忘れてたわ!!」
「………なんだよ?」
目が据わっているオーネストの「どうでもいい事なら今度こそ帰る」という強いメッセージが込められた瞳に、流石のヘファイストスもちょっとたじろぐ。オーネストが来るたび相当アレなことをしている彼女だが、基本的に彼女は「来て貰う」立場だ。ヘソを曲げたオーネストが来なくなる可能性もあるにはある。
流石に引っ付き過ぎたかしら……と反省するヘファイストスだが、どうせ次にオーネストが来たときには忘れているのが彼女の悪い癖。それはとも
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