28.むむむ。
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の役割に比べれば大したことではありませぬよ。この街は、ウラノス様の祈祷なしには成り立たぬ場所ですから」
「それでも、だ。お主を深夜のヤケ喰い癖がつくほど苦労させてしまっておる事は、心苦しいとさえ思っておる」
「ははっ、それこそお気になさらずともよいことです。運動不足なのは私の落ち度ですから」
そう言って自分の腹を軽く叩いたロイマンは、そのでっぷり太った顔を引き締める。
「して、何用ですか?定期報告や会議にはまだ早ようございますが……もしや天界で何か動きが?」
「いや、天界ではない……そう、天界で動きが無かったことこそが真の問題とも言えるか」
「………?」
ロイマンは話が見えずに眉を顰めた。
現在、天界では多くの神々が地上に降臨した所為で魂の選定作業が激務化している。そのため天界から来るメッセージと言ったら「また神が地上に降りた!!」か、もしくは「なに、ルールを破った神!?即刻送還せよ!仕事やらせるから!!」の二択と化している。
しかし、ウラノスは言葉を濁し、婉曲な物言いをした。
そのような反応をする理由を、神ならぬロイマンは一つくらいしか思い浮かばない
「もしや、魂の選定作業に支障をきたすほど神が不足してきた、とか?」
「いや……そうではない。すまぬ、最初から説明すべきだったな……」
ロイマンには、ウラノスがどこか焦燥に駆られているように見えた。地上で何が起きようと中立を貫き続けてきたウラノスが、動揺している。それほど深刻な事態が発生したとすれば、暫く定時退社は出来そうにない。
「して、何が起きたのです?」
「うむ………かつて天界にてロキが暴れていたように、天界の神も決して一枚岩ではない。中には地上に降りる事を危険視されている神もいる。だから、要注意の神は天界の神が監視しているのだ」
いったん言葉を区切ったウラノスは、天井を仰ぐ。
「その一人が、いなくなった」
「……天界から地上に君臨したということ、でしょうか」
「違うな……天界の神も監視していたのだ。ずっとそこにいるものだと思っておったし、善性の神であるが故に魂の選定作業も真面目にこなしておった。……違うな。『今もこなしておる』と言った方が正確だろう」
「今もこなしているのに、いない?」
「ああ。監視していた神は、正体が露見した今も真面目に天界で働いておる。だがな……『監視が始まった時には既にそれは別の神だった』のだ」
言葉遊びのようにも感じるその言葉を、ロイマンは頭をフル回転させて考える。そして考え抜いた末に、ひとつの推論を導いた。
「替え玉……でしょうか」
「天界に残った者たちも迂闊よな……人間の言い方をすれば『役所仕事』よ。忙しさにかまけて事実確認を怠った結果、数百年以上も気付かぬまま
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