27.君散り給うことなかれ
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見てるかなぁ、って」
「???」
事情を知らないリリとベルは首を傾げるが、ガウルは何かを察した。
「あ、ああ……俺は見たことがある訳じゃないが、なんかすごいらしいな……」
「ああ、すごいんだよ。オーネストを意気消沈させるのなんてあの人くらいだからな」
「ガウル師匠、何の話をしてるんですか?」
「まぁ、いつか教えてやるよ。それよりもベル、おまえその腰の投げナイフどこで買ったんだ?高いやつだぞ、それ」
「ああ、これはシルさんっていう人からプレゼントで……」
話が逸れていくのを感じる中、俺は鎖を手繰った自分の掌を見つめた。
(今のあれは、一体――)
困惑する意識の中で、俺はひとつだけ思い出すことがあった。
オラリオに訪れる直前――聖者の如く十字架に張り付けられた、死に損ないの青年。あれは俺に死のうと言った。安楽死のように、永続する苦痛からの脱却を提示した。
――何故だ。
俺が死んだのなら、何故その後になって選択する必要があった。
死という終わり、黄泉路への途を一時的に遠ざけたかりそめの現世の旅人。
それが俺だとしたら――俺の『死』、俺の『命』とは、『死望忌願』の本当の意味は――
「ま、別にいいか。オーネスト曰く、『神、天地にてくたばろうが、なべて世はこともなし』……俺がどうなろうと、さしたる問題はなかろうよ」
俺は『告死天使』、耳元にて汝の死を告げる。
もとより現世の者に在らざれば、其の在り処など泡沫の夢の如く。
今日に悔いはないのだから、俺に未来はいらないのだ。
俺はへらへら笑いながら嘯いた。
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