27.君散り給うことなかれ
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なかった。最強なんてガラじゃないし、大富豪なんて別になりたくもない。別段誰かの為に人生を奉げたいわけでもなければ無償の愛を世界に広げる旅に出たりもしない。
(宙ぶらりんに加えて伽藍堂か。命という灯以外に何も詰ってないとくれば、本格的に行燈だなぁ、俺は。昼行燈じゃあ夜の暗闇を照らせもしねぇぞ)
ここまでダメ人間だと自分が笑えてくる。
向こうからこっちの世界に来てそれなりに楽しいことは否定しないが、実は元いた場所とここはそんなに違いがないのかもしれない。
そういえば、向こう――俺のいた世界はどうなったのだろうか。
原因も分からない大災害に見舞われて、俺は意識を世界の向こう側――つまりこちらに持って行かれた。なら、向こう側の俺は死んだんだろうか。オーネストの奴は自分は死んだと断言していたが、自分の死なんて客観的に認識できるものでもない。
(『死』………か。試してみるか?)
『死望忌願』――俺の死、俺の命、俺がこちらで一緒になった『死に向かう意思』とやら。こいつが死を司るというのなら、その身に纏う鎖を辿ればその先に俺はいる筈だ。それが生きているのか死んでいるのかは別として。
「単なる思いつきではあるが、暇だしやってみますか。何が出るかな……っと」
掌に鎖を出現させ、自分を強く意識しながら、手繰る。
手繰る、手繰る、仏陀の垂らした蜘蛛の糸を手繰るように――
『――害から3日が経過し……――場では自衛隊が急………すが、地盤が脆………者は市の指定………』
ひどくつめたい雨ざらしの下で、途切れ途切れの雑音を聞きながら。
「……――!………!――」
だれかが横たわる俺を、呼んでいる。
「………ろ!意識――……ッシュ症……段……るしか……!――……!」
からだの感覚はどこか遠く、意識はふわふわと彷徨うように。
「………る君、ごめんなさ……!――……し、無くな……――、――!!」
耳には、聞き慣れただれかの悲鳴染みた声がこだまする。
『………氾濫の恐れが………――……療施設は………さんは、その場から………返しお伝えし………』
見上げた世界は、半分だけ黒く染まって――
「――ッ!?」
「……ん?アズ、どうかしたか?」
空から落とされたように、唐突に意識が舞い戻る。
耳はよく聞こえ、身体の感覚はいつもの重力を感じ、意識ははっきりと保たれている。
気が付けばその場の皆が俺の事を見ていた。
「立ったまま居眠りなんてみっともないコトしてませんよね、アズ様?」
「え?あ、うん………今頃オーネストの奴は地獄を
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