27.君散り給うことなかれ
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に嬉しそうなんだ、あんたは」
「だって嬉しいじゃない。ヘスティアに見つかるまで私たちを頼らないで、見つかった後も色んな人を押しのけてきた貴方が、『それはあいつの仕事だ』なんて言うのよ?自分の殻から一歩も出る気がなかった貴方がよ?」
「……気が付いたらそうなっていただけだ。俺が望んだんじゃない」
「でも嫌じゃない。だから受け入れているんでしょう?……それでいいのよ」
爪を洗い終えたヘファイストスは、もう一方の手を取ってそこに自分の手を重ねた。
「貴方は甘えていいの。ワガママを言ってもいいの。それが普通に生きているって事だから」
「俺はいつだって自分勝手でワガママだ。俺以上に我儘な奴なんて業突く張りのフレイヤしか見たことがない」
あれは真正の業突く張りだ。自らが欲しいと決めればどんなに危険で外道な方法であっても一切躊躇う気が無い。純粋に、ひたすら純粋に欲しいものを手に入れる事に対して妥協がない。自分以外はどうでもいい、自分の気に掛けるもの以外はどうでもいい。そんな自分勝手を人から抽出して濃縮させたような欲望の化身だ。
そして、俺もそのような性質を持っている。やると決めたら断固やるし、やらないと決めたら断固やらない。こうあるべきだと思った時には既に手や足が出ている。我慢と嘘は俺の行動に存在しない。
しかし、ヘファイストスは首を横に振った。
「そうかもしれない。でもその一方で、貴方は『当たり前』を……失ったものを取り返すことをどこかで諦めていたんじゃない?欲しくないからと、無意識に遠ざけていたのではなくて?」
「それは………必要ないから必要ないんだ」
「不必要と断ずるものでもない。違う?」
「………そうかもしれない」
本当は分かっている。そんなことは、言われなくとも心の奥底では理解している。
ヘファイストスが俺に何を望んでいるのかなんて、最初から分かり切っていた。
『母さん』がいたら、同じことを言うのだろうから。
けれど。
「だが、それではオーネスト・ライアーは死ぬんだ」
戦わなければ、オーネスト・ライアーは死を迎える。暴力の化身として荒れ狂い、ダンジョンを蹂躙し続けなければ、オーネスト・ライアーはオーネスト・ライアーでいられなくなる。甘える。致命的な妥協をする。腐抜ける。牙を抜かれ、今度こそ終わる。
そして――その先に待っているのは、『おなじみの結末』だ。
それだけは御免だ。『二度と』御免だ。どんな汚泥と屈辱を被ろうが、俺はそれだけは受け入れてはならない。
「俺は戦う。誰にも邪魔させないし、それだけは止めない。それが俺の自由だ」
後悔しない生き方。未来を欲しない生き方。
馬鹿で無力な糞餓鬼には、そんな方法しかとることが出来なかった。
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