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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
26.これだから神ってやつは
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さえ気を配ればきわめて保存性が良く、体積も小さく、ただお湯をかけるだけでこの通り美味しい料理が出来上がる!!分かるかいヘスヘス、冒険者の食生活が一変するぞ……!!」

 ヘスティアは想像する。今の時代、食材を長期保存する方法が限られる文明レベルのこの世界に激震を走らせるであろう発明が呼ぶ、津波のような波紋を。ただ、お湯と「それ」があるだけで主婦は料理から解放され、食に飢える冒険者たちは「それ」を抱えて嬉々としてダンジョンに突入し、いつしかそれはヘスティアのような貧乏な存在にさえ『恩恵』を……人の子が作り出した『恩恵』を浴びる。

 世界は祝福に満ちて――人は、食楽の路へと。

「アイズちゃんの言葉が始まりだった……『ダンジョンの中でもじゃが丸くんを食べたい』……その一言が、歴史の流れを変えたんだ!!」
「歴史が変わる……悠久の時と営みの中に鎮座していたオラリオそのものが動くんだ。歴史の風が吹いている、確実に!!」
「今はまだコストパフォーマンスの問題で大量生産は出来ない……でも、確実に計画は前へ進んでいるんだ!中途半端はやめよう、とにかく最後までやってやろうって、あのサボリのヘルヘル(ヘルメス)でさえ真剣になって出資者を募ってる!沢山の仲間がいる。決して一人じゃない。開発者の一人として、これ以上嬉しいことはあるか!?」
「ボクもこれは応援せざるを得ないぜ、アズ……!ボクに手伝えるのは試食くらいだけど、これを商品化すれば素晴らしい世界が待ってることは分かる!流されるなよ、アズ……もしこの技術を鼻で笑うような連中が出てきたら、ボクがぶっとばしてやる!」
「信じるぜその言葉!!今日からヘスヘスもこの時代の一部だ、歴史を変える力だ!!」
「共に戦おう。共に耐え抜こう。一緒ならやれるさ……掴もうぜ、未来ッ!!」

 交わした握手はどんな金属より固く、暖炉のように暖かく、そして草原をなぜるそよ風のように心地よい。

 それは、世界の悪戯が生んだ奇跡。
 1000年を超えても開発されるかどうかさえ分からないたった一つの着想が生んだ革命の軌跡。
 少女はじゃが丸くんを語り、天使は知恵を囁き、万能者は神の遺産を建造する。それは紛れもなく聖人の所業、新たなる『愛』の誕生。


 ――この世界の歴史に本格的な『インスタント食品』の開発が始まったことを告げる文章が、この出来事の数千年後に発見される。

 日記の著者はヘスティア。その日記に記されていたのは、インスタント食品開発の父とされる男から聞いた激闘の戦記であった。構成の人々はこの日記を歴史的な文章として解読し、その偉業を世界に改めて知らしめたという。

 これは、異世界から来た男と幻想の神々とそれを取り巻く人々が紡ぐ《(フゥズ)(ミィス)》。
 
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