26.これだから神ってやつは
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
アズには『主神がいない』。だから自分の発明がどれほどの危険性と問題を孕んでいたのかを理解できていなかったようである。
ヘスティアは覚えている。かつて、ステイタス更新の仕組みを聞いたこの男が「そんなのあるんだ。やったことないから知らんかった」と小さい声で漏らしたのを。そしてステイタスやレベルを詰問されたときに「俺も知らない」という問題発言を漏らしたことを。
アズライールは強い。それは間違いないが、レベルは不明だ。そも、考えてみれば彼はオラリオに来たときには既に他の冒険者など歯牙にもかけないほど強かった。本来は『恩恵』によって成長力にブーストをかけられることで強くなるのが冒険者のカラクリなのに、彼はそんな単純な構造を理解しておらず、なのに既に強かった。
もしアズが人間ならば、元々冒険者としての素養が高かった上に僅か数週間の短期間で最低でも5回は偉業を達成してランクアップしたらそれくらいの強さと知識量になる。しかし断言するが、人類にはそんなことは実現不可能だ。偉業とは英雄的な活躍――つまり、乗り越えようと思って容易に乗り越えられるほど生易しい内容ではない巨大な壁なのだ。
ともすれば、アズは以前から強かったということになる。
ならば何故彼は強いのか。
これは本当に可能性の話で確率は低いのだが、アズが『人間じゃない』のだとしたら……ある程度の説明はつく。彼がある種の『超越存在』か、冒険者のそれとはまったく別の力を与えられたのだとしたら、説明はついてしまう。その考えに到った時、思わず「キミは本当に人間なのかい?」と聞いた。そして「さあ?」と本気で首を傾げられた時は、こっちも本気で頭を抱えた。
(キミが人間だとボクは信じてる……信じてるけど……!キミは人間っぽくなさすぎだッ!明らかに雰囲気とか態度が超越存在側なんだよ!!)
湧き上がる熱い想いを必死で内に抑え込み、ヘスティアは変なところで無知なアズに説明する
「………あのね、知らないかもしれないけどこの街には『開錠薬』という、と〜ってもあくどい非合法の薬があるんだ。どこぞの神が小遣い稼ぎに開発した、他人の『恩恵』を暴くための薬だ。キミのこれはそれと同じことが可能なんだよ?つまり、この薬も非合法だ。この街でステイタスを知られることの危険性くらいは知ってるだろ!?」
「うん。だから面倒くさいけど一杯プロテクトかけたんだけどなぁ……ほら、説明書」
「なになに?『他人のステイタスを覗き見る目的で使用した場合は薬が使用者の精神に呼応して出鱈目な内容を表示します。また脅迫などによって使わされた場合はエラー表示となります。あと、変な使い方をしたら――分かりますね?用量、用法を守って正しくご利用ください。『告死天使』はいつでも君たちに微笑んでいます』………怖ッ!
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ