26.これだから神ってやつは
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失分を自腹を切って埋め合わせていた。
『これは個人的な事情だから………ファミリアの仕事には出来ないのよ』
『な……何故です!?あの少年はこうして金を工面して持ってきているではないですか!』
『そうよ。でも……その金を短期間で工面するために、あの子はきっと幾度となくダンジョンで死にかけている。一人で下層まで向かい、死にかけて、それでも戦って、更に死にかけて………もしこれを仕事にしてしまったら、私はあの子の危険を願っている事になるわ』
『それは!冒険者ならば誰でも同じことです!誰しも得る物の為に必死にもなる!』
そも、冒険者として大きな対価を得るためにリスクを負うのは当然だ。誰だってより良い武器を得るにはより多くの金を稼がなければならないし、それに伴った力をつけなければいけない。出来ないのなら高い装備を求めるのは分不相応というものだ。
むしろ、椿はオーネストが代金を持って来るまで「実はこの少年は剣を転売しているのではないか」という疑いさえ抱いていた。ヘファイストスが手ずから打った最高級の剣は、そうそう簡単に壊れたりメンテが必要になるものではない。所属ファミリア不明で所在の知れない子供だから、疑いを抱くのは当然だろう。
『手前には分かりません!主神様は何故そこまであの童に入れ込んでいるのです!?我々の仕事は戦いと背中合わせ……それは女子供とて同じことです!貴方はどうして他の者とあの童を区別するのです!』
あの少年が真っ当な冒険者でないのは分かっている。この街の歪みや暗部を押し付けられて育った者特有のギラついた眼光。神に、ファミリアに、夢に希望を崩された者が纏う拒絶の気配は、一度身に付けば消すのは難しい。
だが、言葉は悪いがそういう子供というのはいつだって一定数存在する。全体数は少ないかもしれないが、力と金が物を言うこの街では自然と発生するものだ。
『この街には親を喪った者だって裏切られた者だって、不幸な者は幾らでもおります!』
『そうね。そんな当たり前の事に皆が目を逸らしているから社会というものはよく廻る。私達ファミリアもそれは同じことだわ』
『ならば何故あの童にはそこまで拘るのです!』
そこが、椿にとっては納得がいかなかった。
鍛冶ファミリアの在り方として、商人として、特別扱いというのは大きな問題があるのだ。ヘファイストス・ファミリアは今や街で有数の知名度を誇る。そんな組織が特定の誰かに武器を無償で与えているという事態は、著しく平等性を欠く。それが他ならぬ主神の手で行われているとなれば、あの少年にも当然火花が降りかかるということだ。
それを判らないほどこの主神は暗愚ではない筈だ。
『主神殿は確かに優しい、それは手前もよく知っています!ですが、同時に貴方は無償の愛を振りまくほど自己
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