25.荒くれ者の憂鬱
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んだぞ!?何もしてないのに!!」
……ここでさらりと自分の窃盗未遂を誤魔化そうとする辺り、案外逞しい男だ。しかし、周囲の目は呆れ果てた様な非常に冷ややかなものだった。
「な、なんだよその目は!俺がおかしいってのか!」
「……お前さぁ、『君子危うきに近寄らず』って言葉知ってるか?」
「そ、それくらい知ってらぁ!あぶねぇ橋だって分かってんなら態々渡んなってことだろ!?ば、馬鹿にすんなよ!」
「お前が手ぇ出した男はなぁ………その『危うき』そのものなんだよ。あいつは『狂闘士』だぞ?他人を平気で斬りつけるこの街で一番イカれた男なんだぞ!?腕一本で済んだことを有り難く思いやがれこのトンチキ野郎!!」
「……え?あいつが『狂闘士』ぁッ!?」
『狂闘士』。それは、この街で最も喧嘩を売ってはいけない相手TOP3に入るほどの超危険人物。金髪金目の悪魔とさえ呼ばれるそれは、超越存在たる神にさえ平然と刃を向ける本物の狂人。
自分が手を出した相手がその『狂闘士』ことオーネストであったことを漸く理解した男は、やっと自分がどれほど愚かしい真似をしたかを理解した。オーネストと言えば今までに個人でいくつものファミリアを隷属・脅迫・壊滅させてきた経歴を持つ恐ろしい冒険者だ。一説ではそのレベルはオラリオ最強である『猛者』オッタルと同格ではないかとさえ言われている。
つまるところ、最悪の場合は手どころか上半身と下半身が分離する可能性まであったのだ。その事実を知って尚強がれるほど男は逞しくない。
「……すいません、何でもありません。お家に帰ってポーション飲みます」
「そうしとけや。そして次からはこんな真似すんなよ?周囲に被害が出たらマジで洒落にならんからな」
虎穴に入らずんば虎児を得ず、とは言うが、男が手を出した虎は余りにも巨大すぎたようである。
「……しかし、そういえば今日の『狂闘士』はいつもの覇気がない気もするな」
「隣に『告死天使』がいねぇからいつもより気を抜いてんじゃねぇの?」
「いや、あいつら仲いいから寂しいのかも!なーんだあの化物そんな人間みたいな感情あったん――」
直後、噂話をしていた数人の足元に大砲のような威力の投げナイフが飛来してゴバァッ!!と石畳を粉砕した。
「……ヒトノワルグチ、ヨクナイネ」
「ウン、ホントダネ」
「オーネストサンハウラオモテノナイステキナヒトデス」
(こいつら調教済みだ……)
なお、投げナイフもヘファイストス・ファミリア製だったが流石にそれをチョロまかそうとする人は現れなかったのだが、後に通りすがりのシル・フローヴァがコイン落としたフリして鮮やかな手際で回収したという。
= =
(いか
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