24.在りし日の残影
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。ものぐさで手紙を出さなくなっただけかもしれないし、死んだという知らせも届かない。なら生きているかもしれない、待ってやろうと己に言い聞かせ………葛西流の教えを言い訳にオラリオに確かめることすらせず………ッ。こんな……こんな姿になるまで何もしない父親など……!!」
墓前にゆっくりと、一人の老人が膝をつく。
もう二度と見えぬ死後の世界へ旅立つ息子を必死で抱き止めようとするかのように、墓石に覆いかぶさる。8年前に、20年前に、それよりももっと昔の自分の道場でそうするべきだった。今となっては何もかもが手遅れな、冷たい抱擁。
アキラ・スクワイヤの名はそこにある。
しかし、彼の息子はもうどこにもいない。
それが、老い先短い父親の目の前に突き付けられた事実だった。
「莫迦者……莫迦者………!皆が莫迦じゃ……冒険者が英雄などと囃し立てる莫迦。力を与える莫迦。笑う莫迦。泣く莫迦。争う莫迦。息子を止められなかった救いようのない大莫迦……どいつもこいつも、どいつもこいつもぉッ!お、おおおぉぉぉぉぉぉぉあああああああああああッ!!!」
とめどない涙が、シシドの頬を伝って乾いた地面に落ちる。
責めるのは他人か、それとも不甲斐ない自分自身か。
責任の所在を確かめた所で、もう、意味はない。
人は死に場所を選べない。生きるつもりで生活をしていても、ふとした拍子に死は人の魂を黄泉の国へと引きずり込む。それを必死で避けようとしても、完全に防ぐことは不可能だ。どんな地位にあって何を営む誰であっても、たとえ世界を手中に収めたのだとしても、可能性をゼロにすることは未来永劫決して叶わない。
アキラという冒険者もそうだった。例え家族がどれほど強くそうであってほしくないと願っていても、そうだった。
自分とて、いつかここに名を連ねるかもしれない。
先輩も、後輩も、友達も――オーネストも、いつ『こう』なってもおかしくはない。
そんな当然の事実を今更になって思い知らされ、ココは何も言えなくなった。
老人の慟哭は、ついぞ日が沈んで魔石灯が点灯するまで響き続けた。
ココは、ただそれを見ている事しか出来なかった。
= =
「死んだ人は、どこに行くのかなぁ」
「………急に何を言い出すかと思ったら、何だそれは?」
困った時はオーネスト。複雑な考え事が得意でないココの知恵だ。……相談相手をどこか致命的に間違えている気がするが、ココにとっては些細な事だ。
あの後、ココはシシドを彼の弟子がいるというファミリアまで案内し、弟子が迎えに来た所まで確認してすぐにオーネストの館に行った。それは明確な目的があった訳ではなく、ただ今はファミリアのホームに戻りたくなかったからだ。
するとどうし
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