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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
24.在りし日の残影
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の?」
「正確には、手紙が途絶えたのは20年ほど前じゃ」
「20年……!?それじゃ死ぬまでの間に10年くらい空白があることになるけど、一体なんで……!?」
「さぁのう。あやつのいたファミリアは、あやつと共に壊滅しておるそうじゃ。わしはよく知らんが、ファミリア内部の情報は殆ど外には漏れんらしい。だから当事者が死んでしまえば真実は全て闇に融ける」

 ファミリアとファミリアは敵対関係になる事も多い。身内の情報が漏えいすると、それだけ突かれる隙が増える。だから、本当に大事な情報は当人たちの胸の中。皮肉にも、墓まで持って行ったその秘密は知ろうと思って知れる物ではない。

「ファミリアの……名前は?」
「『テティス・ファミリア』」
「!」
「それなりに大きなファミリアだったそうじゃ。既に主神は天界に送還されておる。壊滅した理由は……『地獄の三日間』とかいう大規模抗争だと言っておった」

 『地獄の三日間』……ココの朧げな記憶が正しければ、それは『ゼウス・ファミリア』と『ヘラ・ファミリア』の壊滅後では最大のファミリア間抗争だ。当時の上位ファミリアの一部が町のルールを無視した攻撃を他ファミリアに仕掛けたことを切っ掛けに血を血で洗う抗争が勃発し、僅か3日の間に17のファミリアが壊滅し、冒険者276名の死者を出した。
 街中で、家で、ありとあらゆる場所で冒険者たちは復讐と野心を燃やし、容赦なく敵を斬り、魔法で殺害し、民間人に死傷者を出して尚それは止まらない。炎と暴力の津波は、ギルドが事態終息の為の戦力を整えるまで三日三晩続いたという。

「私のファミリアはその抗争を防ぐ側としてギルドに協力したって、先輩が言ってた。事件の事は碌に喋ってくれなかったけどね……その時の事は禁句(タブー)になってるみたい」
「それだけ凄惨な戦いだったのだろうなぁ………そんな戦いに、何故あやつは………いや、ここで問うても詮無きことよ」
「………………」
「本当のことを言うとな、この事は知っておったのだ。弟子からの手紙に……大まかな事は書いてあった。今日が息子の命日だということも」

 立ち並ぶ共同墓地の間をゆっくりと歩む二人の足取りは、死者に引きずられるように重くなっていく。
 オラリオの墓地は、一般人を除くファミリアのものの全てが共同墓地になっている。理由は様々あるが、最大の理由は死ぬ人間の数の多さに尽きる。毎年このオラリオに夢を見て飛び込んでは魔物の餌として散ってゆく冒険者は後を絶たないのに、それら全員を個人別に弔っては土地が足りないのだ。
 死人が出ると墓守にギルドから連絡が届き、死んだファミリアの主神の立会いの下に墓石に死者の名が刻まれる。刻み方は様々で、墓石にどんどん堀り足すこともあれば死人が出る都度パネルのような石に名を刻んで陳列していくこともあ
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