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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
24.在りし日の残影
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はどんどん逸れていく。
 最初の頃に受けた元気そうな印象も少しずつ薄れ、その足取りはいつしか普通の老人とそう変わらない歩幅になっている。その狭まった歩幅に合わせ、ココは夕暮れに照らされる道を進んだ。

「………そろそろ、このメモにある場所に着くよ」
「んむ……本当にかたじけない。キミのような親切な若人に出会えたのは幸運じゃったよ」
「でも、この辺って宿もなければファミリアのホームもなかったと思うんだけど……本当にここが目的地なの?」

 『移動遊戯』を行うココはこの街の形をほぼ知り尽くしている。だからこそ、それがずっと気にかかっていた。

 二人が辿り着いた場所は閑静な住宅街だ。商店街と墓地を挟むような形で存在し、引退した冒険者の中でも高齢で、蓄えた金で余生を過ごすような人が不思議と多く集まる。
 まるで散って逝った戦友たちの残り香から離れたくないかのように、墓石の大群を眺めて終焉を迎える。そして、自らの骸はそこへ置いていき、魂は天へと召されていく。大抵の冒険者が引退後に故郷へ戻るにも関わらず、彼等は異郷の地に骨を(うず)めることを選んでいる。そこには、ココには当分辿り着けない境地があるのだろう。

 こんな場所に、レベル6の高みに達したシシドの息子が本当にいるのだろうか。
 それとも、シシドが高齢な事を考えると既に引退しているのか。そうなると少しおかしな話になってくる気がする。シシドの話しぶりからしてまだ現役と言った印象を受ける息子は、冒険者として引退するにはまだ早い気がしてならない。

 これで用件は終わったが、胸にしこりが残る。せめてシシドの会いに来た息子の姿を見るまでは一緒にいるべきか――そう思案したココの様子を知ってか知らずか、シシドは彼女の疑問には答えず新たな頼みごとをしてきた。

「ココちゃんや、もう少しだけこの老人の散歩に付き合ってくれんか……」
「いいけど……おじいちゃん、さっきから元気ないね?」
「そうか………もしかして、わしは息子に会いたくないのかもしれん、な」

 シシドの声は、微かに震えていた。

 その時、ココの中で幾つかの情報が繋がっていった。
 結婚を機に手紙を寄越さなくなった息子――墓地の近くという不自然な場所指定――何かを怖れるような様子――そして、行動と矛盾した『会いたくない』という言葉。ココは反射的に、墓地の方を見やった。

「まさか、おじいちゃんの息子がいる場所って――!!」
「気付いておらなんだか……純粋じゃな、ココちゃんは。おそらく、キミの想像した通りじゃよ」

 シシドは無言で墓地に足を踏み入れた。

「ギルドで聞いたんじゃ……もう8年も前に、名前はここの墓石に刻まれていたと」

 それが、答えだった。

「………8年も、知らないままだった
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