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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
24.在りし日の残影
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げしおったのよ!!カァーッ!!」

 くわぁッ!!と目を見開いたシシドは猛烈な量の唾を飛ばしながら怒り狂う。よほど腹に据えかねていたのか、恥も外面もかなぐり捨てて仕込み刀をブンブンと振り回しまくったせいで通りすがりが「ヒィィィィィッ!?」と腰を抜かして後ずさる。さっき「場所を弁えろ」とかほざいていた人間のやる事とは思えない蛮行である。
 まぁ、幸いにして話は見えてきたし、怒り狂っても人には当たらないように手心を加えているようだ。よって――ココは気にしないことにした。

(……要するに、長男は奔放な人でしたっていうことね。ツッコむと面倒くさそうだから黙ってよーっと)

 なお、途中でシシドはギルドに『街中で刀を振り回す危険人物』として通報されたりとしたのだが、隣に『朝霧の君(アルテミシア)』がいるということで責任は全てココに押し付けられるのであった。

「大体!あいつには将来の家長としての自覚が無さすぎる!そりゃあ弟も才覚に溢れた奴じゃったが、何にも言わんと勝手にいなくなってお家がどれだけ揺れたと思っておるんじゃガミガミガミガミ!!」
「なるほどー」
「しかもあやつめ旅費と生活費の為にわしのへそくりをゴッソリパクって行きおった!!じゃがな、一番かわいそうなのはあやつの婚約者よ!あれほど慕っておったのに声もかけずにいきおって、あの後泣きながら引きこもってしまったあの子を慰めるために門下生がどれほど苦心したことか!他にもガミガミガミガミ!」
「すごいねー」
「その後の嫌がらせが悪意満載なんじゃよ!!へそくり分の金を返してきたときなど、よりにもよってわしの妻宛に送ったんじゃぞ!?おかげでナイショで10万ヴァリスも金を溜めてたことがバレて『何を家族に隠して金溜め込んどんじゃワレぇぇぇ!!』とか叫びながら一晩叩き回された挙句残りのへそくり全滅!!アレ絶対確信犯じゃろ!!」
「おじいちゃんは悪くないよー」
「ああああああ!!わしはココちゃんみたいな素直で優しい娘が欲しかった!!そしたらお家も現当主の次男もどれだけ救われたか!!」

 話を聞いてるんだか聞いていないんだなココはメモを元に道案内を続行する。
 彼女はこういうときもマイペースだ。だが、マイペースなりに疑問を抱くこともある。

(息子さんの住所だからファミリアのホームかと思ったけど、この辺にそういうのはないんじゃ……っていうか、あれ?でも――案内を頼まれた場所ってやけに街の共同墓地に近いなぁ)



 = =



 目的地の近くに着いた頃には流石のシシドも納刀して大人しくなっていた。
 というよりも、口数が明らかに減っている。奥さんの事、二男の事、最近になってこの街へ向かってしまった弟子とそのライバルの事……まるで、肝心の長男の話を避けるかのように話題
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