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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
24.在りし日の残影
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「ふふん、ココちゃんは勘がええの……ほうれ、この通りよ!」

 シシドは悪戯小僧のようにニヤリと笑い、杖の取っ手を軽く捻る。すると何の変哲もない杖の取っ手がかちりと鳴り、中から微かに露出した抜身の刃が姿を垣間見せる。それはまさしくココが偶然本屋で発見した極東の物語に登場する『仕込み杖』――杖に擬態させた鍔のない日本刀そのものだったのだ。

「うわー本物だ!!はー……初めて見たぁ!極東の人達の刀は全部普通の刀だから本物を見れる日が来るとは……振っていい!?振っていい!?」
「これこれ!振ってもよいが、流石に場所を弁えたほうがええぞい?それにココちゃんの聞きたいのは剣ではのうて我が不肖の息子じゃろ?」
「………そだっけ?」
「忘れとるんかい………自由な子じゃの、きみ」

 誰に対してもこういうとぼけた部分は抜けきらないのが彼女の悪癖の一つである。

「ともかく『葛西(かっさい)流』じゃ。わしは葛西流免許皆伝でな?村にはそれなりに門下生も多くおる。そんなわしが息子に葛西流を教え込むのは自然之理じゃった。自慢ではないがスクワイヤの家系は『古代の英雄』の血を継ぐ一族であるが故、息子もその才に恵まれておったのだ」
「ふーん……え!?スクワイヤ家ってそんなに古い血筋なの!?古代の英雄の血筋ってことは神の降臨より前だから千年以上前だよね!?」
「んん……正確には家名としてスクワイヤを名乗ったのは神の降臨から2〜300年ほど後じゃ。まぁそれはそれとして……ともかく、わしと妻の間には二人の息子が産まれた。双方剣の才能があったのだが、話はその長男の方になる。……まぁ、ズバ抜けておってな。こと『居合』に関しては歴代最高であった。これは断言してもいいよ」

 その時だけ、シシドは子を自慢する父親の顔をしていた。
 馬鹿息子だの何だのと罵ってはいたが、それでもやはり息子は息子なのだろう。自らの血を引き剣士として大成した男を、誇らしいと思わない訳がない。ココにとっては見慣れた、戦いに生きる者特有の『誇り』を感じさせた。
 しかし、その表情にふと呆れと微かな悲しみの入り混じった陰りが見える。

「……じゃが、息子は剣を追求する余りに狭い村を飛び出しおったのよ。なまじ才があるが故、狭い村で修業を続けるより誰かと剣を交えることを選びたくなったんじゃろうな」
「あれ?葛西流って門外不出系なの?うちの一族だとダンジョンで戦ってナンボなんだけど」
「ま、普通は剣術を覚えたら実践に移すんじゃろうが、その辺は流派の教えの違いじゃろう。葛西流は己の魂を鍛え上げるのが真髄。故に時代の表に立って歌舞(かぶ)くのはその本意(ほい)より道を違えることだったのだ。言うに及ばず、冒険者になるなど以ての外よ!それを、あんの馬鹿息子が……スクワイヤ家の跡取りを弟に押し付けて夜逃
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