24.在りし日の残影
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これはスキタイに限った話ではないが、世の中は年長者を敬った方がいい。少なくともココの故郷では誰もが年長者を敬っていた。長く生き、多くを知り、深い見識と経験を持つ年長者は歴史の生き証人なのだ。年長者なくして今の時代は訪れなかったのだから。
だから、ココは老人を敬い、手助けをするのは当たり前のことだと思っている。
そう言うと、迷子の老人は感動したように目を潤ませた。
「いやぁ、ココちゃんはええ子だのう。それに比べてうちの莫迦息子と来たら……『オラリオで結婚した!』の連絡を境にぱったりじゃよ!まったく……嫁の顔も見せんでからに!」
「あははは……まぁオラリオにいると簡単には休暇取れないからしゃーないかもね。息子さん、強かったの?」
「んむ。手紙じゃ『れべるろく』とか書いておったわ。若いのは直ぐに横文字とか格好つけた言葉を使いたがってイカン。『れべるろく』がどの程度だっちゅうの!」
「レベル6………そりゃ滅茶苦茶強いわ。多分その息子さん、ファミリアでも団長とか幹部とかそういう地位にいたんだと思うよ」
「なんだと?ぬぬ……そんなに強いのか。わしの中じゃあ未だにケツの青いガキなんだが、実は出世しておったんかのう………」
『移動遊戯』も終わってそろそろ帰ろうと思っていたココがおじいさんを発見したのは偶然だった。
道端で困ったように地図を見ては周囲を見渡して溜息を吐いていた老人は、名をシシド・スクワイヤと言った。何でも昔にオラリオへ向かった自分の弟子の現在を確認するために遠路はるばるオラリオに来たらしい。
長く白いひげと刻まれた多数の皺は彼が優に六十を越えた齢であることを感じさせるが、老齢で杖をついている割には動きがしっかりしている。名前や人種的な特徴だけを見ると極東の出身に思える。だとすれば……老骨には堪える長さだ。行くのも帰るのも相当な時間がかかったのではなかろうか。
「おじいさん、どこからオラリオまで来たの?やっぱ極東の方?」
「いいや、もちっとオラリに近い所じゃよ。確かにウチの地域には極東人の血を継ぐ者が多いがの。ま、大航海時代とかに色々あってそうなったんじゃとよ。ド田舎じゃったせいで余所者の血が混ざりにくかったのもあって、よく極東人に間違えられるわい」
快活に笑うシシド。歳の割にフランクな印象を受けるご老公だ。このような老人の息子というのが一体何者なのか、今更ながらココは興味が湧いてきた。
「息子さん、どんな人だったのか聞いていい?」
「ふむ、そうじゃの………先に言うとくが、我がスクワイヤ一族は『葛西流』という剣術を脈々と受け継ぐ剣士の家系での。まぁ、お察しの通り極東を源流とする剣術じゃよ」
「へえ、極東!ってことはその杖って実は仕込み杖だったりするの!?」
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