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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
23.舞空遊跳
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ニカが空を飛びながら猛スピードでこっちに迫って来てるぅッ!?」
「うお〜!くっあ〜〜!ぶつかる〜〜〜〜〜!!こうなったら最終手段、インド人を右にッ!!」
「黒くてカサカサして飛ぶのいやあああああああ!!こっちこないでぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 謎インド人を発動した男は右腕に持っていた鎖を捻って辛うじて外壁直撃コースを回避。ズドガッシャアアアアアン!!と盛大にド派手な音を立ててフレイヤの部屋に突っ込んできた。
 なお、何故フレイヤが流石に愛せない家庭内害虫(あれ)を連想したのかは謎である。

 後から聞いてみると、アズは『移動遊戯(パルクール)』という遊びをやっているうちに彼にしか出来ない独自の遊び方を発見してはしゃいだ結果、動きをコントロールしきれずにここに突っ込んで来たらしい。前々から正体不明で死神っぽい男だったアズだったが、フレイヤも流石にここまでダイナミックに寝込みを襲ってきた男は初めてだった。

 彼女としては色々と――フレイヤ独自の視点から見て――気に喰わない所があるアズだったが、この件でなんとフレイヤは悲鳴をあげてスッ転んだ上に呆然としている所を見られるという猛烈な失態を冒した。
 何というか、そういうのはフレイヤのキャラではないのだ。キャラではないのにアズ相手にそう言う所を見せてしまったというのは、彼女からすると果てしない恥辱なのだ。
 好きな相手にそういう所を見せて魅了するのなら何の抵抗もない。だが、押しかけてきた好きでもない男にそういう生娘のような部分を見られるというのは、美の神のプライドからすれば不覚以外の何物でもない。

 それが例えアズの意図ではなかったとしても、「いいようにやられた」という事実がフレイヤの中に生まれてしまう。別にフレイヤの『愛』の邪魔など何一つしていないから恨んだりはしないのだが……ともかくその日から、フレイヤはアズが苦手になった。

「もう、何なのよ……魅了には欠片も引っかからないし、魂は『死神より死に近い』し……わたくしの部屋にまで押しかけておいて平謝りして帰るだけって何よ!?男として燃え上がるものはない訳!?貴方はいったい何なのよ〜〜〜っ!?」

 結論から言うと、こうだ。

 アズライール・チェンバレットは、美の女神フレイヤを以てしても「意味わかんない」。

 尚、オッタルは自分の主が生娘のように騒いでいる光景を見て「フレイヤ様は今の光景を眷属には絶対に見られたくないだろう」と判断して静かに耳と目を塞いだため、情報が外に漏れる事はなかった。
 
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