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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
23.舞空遊跳
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パルクールに似ていたからそう呼んだだけで、それを聞いた周囲が勝手に採用したのが真相である。アズに到っては鎖を使った全く新しい移動方に挑戦して「これが俺の立体機動!」と意味不明な事を叫びながらバベルの頂上に鎖を引っかけて飛んで行ったが。あの鎖、いったいどこまで伸びるのだろうか。噂によるとフレイヤの部屋に突き刺さって部屋の主を死ぬほど驚かせたそうだ。

 閑話休題。
 ともかく、ココはこの屋根の上界隈では「『移動遊戯(パルクール)』の開祖」とも「幻の走り屋」とも噂される注目の的なのだ。そんな人物を見かけた周囲は、当然ながらこう考える。――競いたい、と。

「いたぞ、『黒豹』だ!」
「へへっ!鍛えに鍛えた俺のパルクールテクで今日こそ正体暴いてやるぜ!」
「『黒豹』様〜〜!サインちょうだ〜〜〜い!!」
「ブラックパンサー……略してブラパン?」
「その呼び方は止めろ!下着屋みたいになるから!」

 ココに追い縋るように十余名の冒険者が素早い身のこなしで屋根の上へと駆け上がり、跳躍するココの後ろに着いた。ジャッカルが野を駆けるように、鷹が空を切るように、オラリオの街並みの上を集団が駆け回る。

「おーおー集まってきた集まってきた。そんじゃー今回は北通りにあるギルド支部の屋根を最初に踏んだ人の勝ちねー!!」
「「「「やぁぁってやるぜ(わ)ッ!!」」」」

 ルールらしいルールも碌にない。
 あるのは『イケてない事をするな』という暗黙の了解だけ。
 争うためではなく、金儲けの為でもない。ただ純粋に、この瞬間――群れとなって一つの目標めがけ疾走する瞬間が心地よい。自分の限界を探るように全力で、自らが楽しむことを忘れぬよう伸び伸びのと、オラリオの自由な若者たちは一斉に駆け出した。

 思い思いの速度で自由な順路を辿り、バラバラな人間たちは有機的に動き回りながら進む。ある者は建物の間に垂らされた洗濯ロープを足場に飛び、ある者は看板の上を伝うように進み、中には狭い路地を三角飛びで跳ねまわって方向転換する器用な者の姿もある。
 不思議な事に、彼らは皆『黒豹』との競争に負けると何も追求せずに自然解散する。正体を確かめるという目的がある割には顔も隠していないココの正体を詮索しない。それはもしかすると、彼女に正体不明のままでいて欲しい、謎多き憧れの存在のままでいて欲しいという願いから来るのかもしれない。

(次からはサングラスとかで目元だけでも隠してみよっかな?)

 誰も知らない正体不明のカリスマ。そういうのも夢があって面白いかもしれない。
 そう思いながら、ココは周囲で一番丈夫そうな屋根に飛び移り、そこで周囲が自分を通り過ぎたのを確認してからゆっくりとした足取りで屋根の端へと行き、それより先に足場のない淵に背を向けた。

「なんだ
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