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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
23.舞空遊跳
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うん」

 不意の一言にココは少し驚いたが、気恥ずかしさから少し目を逸らしつつも素直に頷く。
 フーという男は生真面目で口うるさい時があるが、いつでも優しい。アズは善性の中に酷く乾いた面が見え隠れするが、彼の優しさはじわりと浸透してくる献身的な暖かさがあった。
 きっとこの男は表に出れば女性の心を掴むんだろう。アマゾネスのタイプではないが、きっとヒューマンやエルフには人気が出るに違いない。今はマイナーファミリアの工房に籠っているしレベルも1だから注目されてはいないが、なんとなくココには想像がついた。

(そう考えるとフーって優良物件よね。別に結婚したいとかは思わないけど、本当ならこーいうのを旦那にしたほうが夫婦生活とか上手く行くのかな……)

 ……が、同時にココは知っている。
 この男は優しいけれど、時々ものすごく酷い事を言ってその優しさを台無しにするのだと。

「君がくたばったらこの子は自力で帰って来れないからね。この子が活躍するために頑張って生き残ってくれ!」
「おいコラー!?私より盾優先かーいっ!ちょっといい話っぽくて感動したのに酷い裏切りを見た!」

 いい笑顔で親指を立てるフーのジョークとも本気とも取れない態度が、どうにもココには理解しがたい。こういうとき、ココはつくづくこう思う――フーのことは嫌いじゃないけど反りが合わない、と。



 = =



 ココはダラダラするのも好きだが、走り回るのも好きだ。
 休める時に休んで動くときに動く。実に野生動物的だが、そもそも人間だって昔は野生動物と大差なかった事を考えれば不自然はない。だからココは時折、街の屋根から屋根に飛び移ってオラリオ中を駆け回る。

「やっふぅぅぅ〜〜っ!!」

 足を踏みしめて、トップスピードを維持したまま跳躍。宙に投げ出された身体にぶつかる風の心地よさを感じながら、2件飛ばしで建物の屋根にとん、と着地。着地のエネルギーを最小限に抑え、トップスピードを落とさないまま今度は通りを挟んで反対側へと跳ねる。

 その姿は余りに早すぎて地上からは一瞬しか見えない。戯れに彼女を追跡しようとした冒険者もいたが、その殆どが1分もしないうちに振り切られている。故に奇声を上げながら屋根の上を疾走する謎の女の正体は案外と知られておらず、特徴的な黒髪から『黒豹(ブラックパンサー)』という仇名で囁かれている。

 なお、追いかけっこに負けた冒険者たちがリベンジに燃えていろんな場所を飛び跳ねていた所、楽しそうという至極単純な理由で参加者が増加。偶然練習場の近くを通りかかったオーネストによって『移動遊戯(パルクール)』という名前の競技になりつつあるのはここだけの秘密だ。
 ……補足すると、オーネストは彼らの動きが前世界の記憶にあったスポーツの
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