22.朝霧の君
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例えばだが――ココ・バシレイオスの一日はいつも同じ女性の声で始まる。
「お姉ちゃ〜〜〜ん!稽古の時間!!」
バァァン!!と大きな音を立てて部屋のドアが開く。ココの健やかな朝を台無しにした天真爛漫な少女は、朝早くから訓練用の鎧と木刀を抱える物騒な少女の登場に、ココは内心「もう少し寝かせてくれ」と思った。しかし思いは言葉にしないと伝わらない。そして伝えるために口を開いてしまうのが億劫だ。イコール、もうちょっと寝たい。
と、そこまで思考が廻った瞬間、ココの被っていた布団が一気に引っぺがされて自らの身体を包む暖気の加護が消滅した。
「ほら起きてっ!日は昇ったし雄鶏も鳴いたよ!ママも朝ごはんの準備はじめたし皆も起きてるよ〜〜!」
目を開けなくとも大体何が起きたかは想像できる。勇ましき妹分がココを安寧に誘う睡魔の手先、布団をはぎ取ったのだ。布団も無しに寝ていても寒くて居心地が悪いが、しかし未だに睡魔は強力な誘導催眠魔法を放ち続けている。そう、ココじゃなくて睡魔が悪いのだ。
「んんん………あと6時間眠らせて……」
「昼になっちゃうよ!待てない待てない待てない〜〜〜!!」
「もぉ………こらえ性がない妹分だこと。しゃーない、一丁相手したげよう!」
ベッドからむくりと立ち上がったココは、顔に垂れた長い黒髪を振るってベッドとしばしの別れを告げる。こうなった以上、妹分は絶対に退かない。全力で睡魔を追い払って相手をしてあげ、心残りの睡眠は昼寝に変更だ。
「お姉ちゃん、ダンジョンにずっと籠ってて休暇の時くらいしか稽古してくれないんだもん!たまに帰ってきたらそうやってベッドに齧りつきだし!」
「だってダンジョン内じゃ基本寝袋だし。アレ、結構お尻とか痛くなるからとフカフカのベッドが恋しくなるのよ。冒険明けのベッドの上でとろけたいのよ……」
「そんな事言って遠征終了後3日も大寝坊したじゃない!」
「いやぁ、久しぶりのベッドの感触を存分に堪能してたら見事に昼夜逆転したわー……」
ぶーすかと文句を言う少女は、名をマナと言う。彼女はココを姉と呼ぶが、正確には妹分といった表現の方が正しく、血縁関係どころか同じスキタイの戦士ですらない。
マナはオリオン・ファミリアの先輩たちの間に生まれた子供だ。ココが5年前にファミリアに入った頃にはまだ8歳で、ダンジョンに憧れて剣を習おうとしては忙しいからと断られていた。それから色々とあって、今ではこうしてココに教えを乞うている。
彼女と年齢が一番近いのはココだからか、家族同然のファミリア内でも二人は特に距離が近い。一緒に風呂に入ったり同じベッドで寝たりもしたから、ココにとってもマナは妹のようなものだった。
「ま、今日はきっちりシゴいたげるから先に行って素振りで
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