暮れ泥む街衢の陰で
21.死んデレらストーリー。
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姿でぼうっとしていると、リリルカ・アーデという存在が最初からいなかったのではないかと思えてくる。自分がリリであれリリでなかれ、皆は興味がないように通り過ぎていく。それほどにリリという存在はちっぽけて希薄で、求められていない。
ならばいっそ――このまま流れに乗って消えてしまおうか。
そう考えた矢先、リリの周囲の空気が変わった。
「あれ、リリだ。こんなことろでぬぼーっとして何してんの?」
「え……あ、アズ様。おはようございます」
条件反射的にペコリと頭を下げると、そこにいた人物も「これはどうもご丁寧に」などと言いつつ頭を下げてへらっと笑う。
アズライール・チェンバレット。
どことなくパパという言葉が似合う気がする自称リリの三歳年上は、今日も変わらずお気楽そうだ。外見は若そうに見えるけど、本当は何歳なのか分からない。下手をしたら神のように数億年単位で生きているかもしれないし、彼の自称する通りかもしれない。そんな人物だ。
彼が現れると周辺の空気が冷たくなる。陰と陽ならば限りなく陰に偏ったその気配は闇や極寒のように自然界にある畏れとどこか似ていて、殺気の類は欠片も感じられない。最初は恐ろしかったそれも、今のリリにはむしろ涼しい程度にしか感じなかった。
「今日は天気がいいねぇ……こんな天気がいい日は昼寝とかしたいんだけど、俺が昼寝すると何でか物珍しがって人が集まるんだよなぁ」
「アズ様は何かと目立ちますからね……くすっ」
「というか、何故に様付け?」
「年上でしょう?」
「そうだけど」
「なら様付けです」
「そういうもんか……?」
何やら釈然としない模様だったが、深く考えるのは苦手なのか直ぐに「ならいいや」と笑った。体は大きいのにこういう時はちょっと子供っぽくてキュートだ。
「ま、それはそれとして。暇ならちょっとダンジョン行かない?知り合いの神にファミリアが出来てさぁ、今から訓練なんだよね」
「新人さんですか……ぶっちゃけどうでもいいんですけど、ヒマですしいいですよ」
「あっはっはっはっは、正直だねぇ!ま、護衛は俺がするから気軽にいこうか」
どこか毒のあるリリの物言いを快活に笑い飛ばした彼は、案内するように手を引く。
大きくて暖かな掌。この手がリリが無気力になる切っ掛けだと思うと少々複雑だが、彼は当然人の気など知りもしないだろう。
彼も本質的には自分勝手なのだ。自分の命も省みずにダンジョンにも行くし、お金の使い道も極めて適当。商売もどきをしてる癖に利益は簡単にマリネッタへ放り出す。それが貧乏人にとってどれほど妬ましい行為なのかも、どうせ深く考えてはいない。
しかしそうだと分かっても、リリは何故かこの男の事を意識してしまう。
「あの……一ついいですか?」
「ん?
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