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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
20.Soul Bet
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ガンダールがいた。狐を連想させる目も、弧を描く口も、そして貫いた筈の心臓までもが最初にこの店に入った時と同じ形で、いた。
 ありえない。確かに殺した筈だ。いくら魔術に長けたエルフといえどあの速度ならば詠唱する暇もないし、回復魔法を持っていたとして自分の心臓を丸ごと再生するなど不可能だ。しかし、ならば何故――ぐるぐると取り留めもない思考が渦巻いて冷静さを奪っていく。

「驚かれましたか?ふふっ、実を言うとわたくしもこの部屋に来ると言葉に出来ない重圧を感じます。ここで大切な物を賭けてきた真剣勝負の残滓とでも言うのか……」

 その声は、ガンダールの声だった。だが、目の前のガンダールは喋っていない。無意識に声の行先を目で追うと――男とガンダールが入ってきた部屋の扉から、男とガンダールが入ってきていた。そしてガンダールは心臓を抉られて絶命したガンダールを踏み越えてテーブルに付き、男は勝負のルールを提案している。
 背後に足音がした。利き手を血染めに、鍵を持った男だった。
 男は、まるで実体がないかのように男をすり抜けて『1684番』の棚に強引に鍵を差し込む。

「実に下らない……100%の覚悟があるからこそ賭博場は輝くのに、随分と純度の低い覚悟がやってきたものです。オーネスト様のそれが宝玉ならば、貴方は精々海辺の貝殻程度――興ざめですよ、お客様」

 男がまたガンダールを貫く。なのに貫いた男の後ろには未だにけちなチップでポーカーをする男とそれに向かい合うガンダールがいる。得体の知れない力に縛られるように震えだす体を無理に横へ向けると、そこには先ほどから変わらないガンダールがいた。そのガンダールの後ろには、ゆっくりと階段を上るガンダールがいる。

 さもそれが当然に起きることであるかのように、男を置き去りに部屋に男とガンダールが増えていく。とても恐ろしい事が起こっている筈なのに、震えで声も出すことが出来ない男は、その場にへたりこんでガンダールから後ずさった。

 この男が元凶だ。この男を殺せばいい筈だ。なのに――『この男はさっき殺した』。
 まるでペテンだ。この空間が、彼自身が、賭けそのものが全てペテンだったかのようだ。
 しかし一つだけ――男が追い詰められているという焦燥だけが、本物だった。

 ガンダールは笑顔のまま、後ずさった男の方へと歩み寄る。

「ええ、理解できないのでしょう?しかし、説明する義理はありませんねぇ……あんなにも退屈で下らないゲームを続けさせた上にルールまで破ろうとした貴方の行いは少々度が過ぎております。分かりますか?――貴方の賭けた命、ギャンブラーとして素直に受け取るには些か不愉快だ。本来ならばさくりと介錯でもしてあげる所ですが……」

 ガンダールの仮面のように張り付いた笑顔が、魔石灯の逆光を浴
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