20.Soul Bet
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ガンダールは小さく笑い、口を閉じた。
何を思い笑ったのかは、男には分からなかった。
ゲームは静かに進んだ。チップをベットし、カードを見極め、今のまま続けて相手に勝てるのかを吟味する。時にはドロップし、時には攻め、時折簡単な会話をして様子を伺いながら時は進み――おおよそ3時間の時が過ぎた時、勝負の決着の時が近付く。
男は、ガンダールに対して劣勢だった。
強い役が出来てもあっさり降りられ、相手の不意を突いたつもりでいれば負ける。時折チップを大きく奪い返して持たせはしたが、3時間にもわたる激戦の疲れから男は小さなミスや油断が増え始めていた。男は、自分の手札を見て、ガンダールの人を食ったような笑みを見て、チップを見て、今しかないと思った。
緊張でカラカラに乾いた声で、男は叫ぶ。
ガンダールは興味深そうに口元の描く弧を深くした。
「大きく出ましたね。全額ベットですか………ふふっ、ギャンブルの浪漫であり、同時に多くは破滅への道筋。面白い……貴方はその手に握った5枚の紙切れとチップに己の魂を注ぐ覚悟をしたのだ。その上で勝つと己を信じて……」
ポーカーのチップを賭した時、他のプレイヤーにはいくつかの選択肢がある。相手の額と同じ額を賭けて応えるコール、ベットより更にチップを上乗せするレイズ、そして勝ち目がないと見てゲームを降りるフォールド。ハッタリで自分の札を大きく見せるも、大きい札と悟られぬようにして相手を誘うも自由選択。それがポーカーの醍醐味であり、最も難しい部分でもある。
レイズは正にハイリスクハイリターン。勝てばコールより多くのチップを手に入れられるが、負ければその分多くのチップを犠牲にする。逆を言えば、レイズを仕掛けてきた相手は手札に相当な自信があると見て良い。
つまり、リスクを考えるならばガンダールが乗るべき勝負ではない。
「勝つ覚悟、とおっしゃっていましたね。ならばそれが本物か見極めるのもまたギャンブラーの矜持でしょう……コールでございます」
それでも、ガンダールはチップの山を掌で押した。
次の一手を出した瞬間、このポーカーは決着する。そして、男の命の行方もまたその瞬間に決定する。生きるか、死ぬか。繋ぐか、断つか。刹那に込められたデッドオアアライブの緊張感がその場の時間を停止させた。
男が手札を見せる。命の札を。
ガンダールもまた、それに応えて手札を見せた。
数秒の沈黙――そして、先に口を開くのはガンダールだった。ガンダールは満足そうに頷き、二人のギャンブラーの勝敗を感心したように見下ろした。
「ふむ、勝つ覚悟とやら……見届けさせていただきました」
男の手札……それはダイヤの7スペードの8、クローバーの10、ダイヤのJ、ハートのQ。
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