暁 〜小説投稿サイト〜
俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
20.Soul Bet
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7 《デュース・トゥ・セブン》』である。

「時に、貴方に一つ聞きたいことがあるのですが……構いませんかな?」

 カードを見つめていたガンダールの視線が、男へと移る。

「とても基本的で根本的な疑問なのですが……貴方は何故オーネスト様の情報をお求めなので?」

 この『アプサラスの水場』は会員制になっているが、会員が非会員に権利を委譲することは禁止していない。何故なら、その非会員が粗相やルール違反をした場合は移譲した元会員諸共に冷酷なる制裁が下るからだ。そして、この男は今日初めて神聖なる賭博場に訪れた。
 会員ならばオーナーの持つ『コレクション』の名前ぐらいは知っているだろうし、移譲された権利と共にオーネストの情報の事を彼が知った可能性は十分にある。だが、ガンダールが質問しているのはその理由だ。

「初めて訪れた賭博場で、突然に自らの命をベットする……あり得ないことではありません。現にそれをやった男達は何人か存在しました。しかし……分からない。オーネスト・ライアーの背中はこの街でもトップシークレットに入る情報ではありますが、手に入れるメリットはそこまで大きいとは言えないのですよ」

 冒険者の背中には神聖文字でステイタスが刻まれている。何が強く、何が弱く、何のスキルを持っているのか……神聖文字を読める者にとっては相手の長所と短所を把握することが出来る。背中の情報とはそれだけ貴重であり、そして誰もが晒したがらない。人体の新たなプライベート・ゾーンとさえ言えるだろう。
 しかし、命を賭けても知りたい物とは言い難い。
 そも、他人の冒険者の背中など相手と敵対する事や弱みを握る事を前提とした情報だ。確かに利益にはなりうるが、余程重要な物を賭けた『戦争遊戯(ウォーゲーム)』や暗殺でもない限り命を賭ける理由にはなりえない。

 そして、オーネストはファミリアに所属しないので決して『戦争遊戯(ウォーゲーム)』は成立しないし、暗殺をする前に自分が死んでは世話ない。客観的に見て、男が情報を欲する理由が欠如していた。

「背中は多くを語ります。その者の辿ってきた道筋、努力の後、人物像……ここだけの話、賭けの対象として背中の情報を求めたこともありました。オーネスト様も数少ない一人でございます」

 ガンダールの眼がさらに細まり、妖弧の眼光へと変わる。

「あの方は、とても面白いお方だ。永く勝負師をやっておりましたが、あれほど印象的なお客様は他におりませんでした……お連れの方も中々に興味深い御仁でしたが、彼はもっと純粋な………勝敗の先にある彼岸を見た者の、覚悟の瞳でございました。では、貴方は?貴方は何の覚悟があってここに?」

 男はカードを1枚チェンジしてから、「勝つ覚悟だけあればいい」と呟いた。

「……ふふっ」

 
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