20.Soul Bet
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、タイル張りの壁は石扉へと変貌した。奥には足元を最低限照らす魔石灯と、長く続く階段。男は驚きもせずにその階段を下りていく。幸いなことに、階段の奥からは悪臭を忘れさせてくれるお香の匂いが吹き上げてくる。
暗闇の中、延々と行き先の見えない階段を下りていく。この階段に辿り着く先があるのか疑いを持つほどに、その時間は永遠を感じさせる。実際には僅か1分程度でしかない筈なのに、男は果てしない時間を旅した気分になってきた。
しかし、この世に永遠は存在しない。男の旅路にも終わり――目的の場所の扉が見えてきた。
あの酷いバーと比べるとあまりにも奢侈な金細工の装飾が為された扉。男は扉に歩み寄り、ハープを象ったドアノッカーを鳴らした。
少し間を置いて、扉が開く。
薄暗い扉の向こうにいたのは、ギルド職員の服装に似た白シャツと黒ベストの男性が待ち構えていた。エルフ特有の鋭角的な耳と、天女の羽衣を想起させる薄布の肩掛けと金色のバッジをつけた男性は優美に一礼した。
「ようこそ、この街で随一のギャンブラーが集う神聖なる決闘場――非合法賭博場『アプサラスの水場』へ。わたくしはこの賭場のオーナーを務める者……ガンダールと申します。以後、お見知りおきを……」
= =
「街の南にも賭場場はありますがね……ふふっ、一時期はこの店の方が規模が大きかったこともあるそうです。尤もそれは先々代の頃の話なので100年以上前になりますが、ね」
ガンダールは外見年齢こそ20歳前後に見えるが、エルフ故に外見相応の年齢ではないように思える。狐を連想させる細目と頭の後ろで結ばれた青白い髪が印象的なその男は、突然の来客にも動じずに丁寧な案内を続ける。
「それにしてもわざわざ旧道からのお越しとは通ですな。新道では会員証のネックレスも合言葉も変わっていますし、入り口は清潔な物に変えているのですが………おや、どうしたのですか?随分悔しそうな……ああ、会員証を手に入れた際に教えられたのが旧道だったのですね?ご愁傷様です……ふふっ」
男の通ってきたのは大昔に作られたカジノ入会ルートで、現在の客の殆どは新道という利便性の高い道を使っているそうだ。ではなぜ旧道が残っているのかというと、それは付き合いの長い通な客や神が愛着のある旧道を潰さないで欲しいと頼んできたからだという。
あの汚い空間を越えた先に待つ賭場――その独特の感覚は、長く入り浸った者にしか理解できないだろう。
やがて、古の冒険者や神々が心を躍らせた賭場がその姿を現す。
『上』にある公式な賭場に勝るとも劣らない煌びやかな装飾――テーブル、トランプ、チップ。
ルーレットの上を転がる球の行先に一喜一憂し、スロットの回転を見極める事に胸の高鳴りを覚え、トラン
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