19.向カウハ修羅ノ道
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
……例え過去に何が起きようと事実を曲げる事は出来ない。ボクは確かに自分の意志でベル君を眷属に迎え入れたし、過去や仮定なんてものに意味はない。ボクはいつだって可能性を信じてる」
彼女と軽く乾杯をしつつ、アズライールは最後まで自分の中にある一つの答えを胸の内に押しとどめた。
得ることと喪うこと、救われることと突き落とされることは同じ場所に存在している。
オーネストに味方が出来たとしても、その味方がいつまでもオーネストの近くにいるとは限らない。絆が深ければ深いほどに、それを断たれる苦しみも、また。
(多分、その時に初めてオーネストは問われる。己の存在と、進む未来を……そう、あいつの時間はその時初めて動き出す)
何の根拠もない予感――オーネストが決断をするとき、少なくとも自分はその場にいない気がした。
= =
同刻――『酷氷姫』率いるエピメテウス・ファミリアが体勢を立て直すために地上へ昇た頃。阿漕な商人たちで賑わう商店街を通り過ぎた所で、狂と凶は出くわした。
「よう、死にたがり。まだくたばってねぇみたいだな?」
「よう、生きたがり。まだ天寿を全うしてねぇようで何よりだ」
これが、ベート・ローガとオーネスト・ライアーが出会うたびに繰り返される交友風景である。何も知らない人が見ればマジでボコる4秒前みたいな光景だが、残念なことに二人は4秒後に互いに悪い笑みを浮かべて一緒に歩き出すだけだ。
説明などは必要ない。今、この18階層に遠征の為に訪れたロキ・ファミリアがいて、そしてそこにオーネストもいた。事実関係はそれだけであり、確認するまでもないので二人の会話も素っ気ない。
「やけに上層で会ったなぁ?一昨日にダンジョン入りしたって聞いたからもっと下にいると思ってたんだが、どういう風の吹き回しだよ?」
「野暮用だ。もう済んだ」
「あの死神野郎も一緒か?それともココの奴か?」
「いや、今回は馬鹿だ」
「ああ、あのいけすかねぇ人形遊び野郎か……」
これでつつがなく会話が成立するのはどうなんだろうと思うが、彼らの中では馬鹿=ヴェルトールという認識である。ベートには嫌いなものが山ほどあるが、ゴースト・ファミリアとは基本的に仲が良くない。というのもゴースト・ファミリアには変則的な戦法や対人戦に長ける者が多いせいで、正面切っての戦いをやりにくいからだ。特にレベルも得体も知れないアズと自分よりレベル下なのに『あんな物』を使うヴェルトールは好かない。
ベートが好むのは純粋な強さと闘争。そして強さを求める意志だ。オーネストは別として、ゴースト・ファミリアには強さに対してストイックな存在は少数派だった。そして、実を言うとベートは特にオーネストと話すことがある訳でもない。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ