暁 〜小説投稿サイト〜
俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
19.向カウハ修羅ノ道
[2/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ルにはアズの言葉の意味は分かっても理解は出来なかった。
 辛いのならば逃げてしまえばいいのに。自分を家族同然に思ってくれる人がいるのなら、その人と共に歩んでいけばいいのに。

「あんまり深く考えなさんな、ベル君」
「ガウルさん……?」
「つまり、『オーネストは英雄ではない』ってだけの話だよ。女の子を助けるために戦うベルとは向かう方向も到達点も全然違う。だから目指す必要はない……それだけだ」
「あのお方のお考えなさることなど、理解する必要はありまへん。あのお方はあのお方で、坊やは坊や。それが真実やから……」
「それはなんとなく理解できました。オーネストさんは僕の憧れるような英雄じゃないってことは………でも」

 悲劇のまま終わる物語など、ベルは信じたくない。

「今のオーネストさんにはアズさんや神様みたいな味方がいるんでしょう?」

 オラリオにはいる筈だ。悲劇に見舞われた人を助ける英雄が。いや、それは英雄ではなく友達かもしれないし、恩人やパートナーかもしれない。或いは神なのかもしれない。それでも、何か一つくらいは救いがある筈だ。
 そして、木漏れ日のように差し込んだその光は――きっとすぐ近くにいる。

「決まってんだろ!何せこのアタシは逆にオーネスト様とアズ様以外にゃ殆ど味方いねぇし!……なぁ、浄蓮♪」
「ねー、めりーじあ♪」
「……二人の唐突な友達少ないです宣言はさて置いて、俺もオーネストには借りがある。返すまでくたばって貰っちゃ困るのは確かだな」

 ならば――やっぱりオーネストの全てが間違っていたわけじゃない。喪って、喪って、喪った末にでも得た物があるのなら、英雄とはいかずとも救いはあった筈だ。
 ベルは、ただその一点だけはきちんと理解できた。

 ベルとガウル達がノリを戻していく中、ヘスティアは小さな溜息をつく。
 当事者でない人間には分からない後悔というものは、未だに消えていない。

「もう少し、運命がボク達の方に向いてればなぁ……振り返っても事実は変えられないけど、多かれ少なかれオーネストの存在はボクの心に楔を打ったよ。思えばベル君を眷属に迎え入れたのも、無意識にあの時の贖罪をしたかったからかもしれないね……」
「それは違うと思うけどな」

 しみじみと神酒の入ったグラスに視線を落としていたヘスティアの眼が、声の主――アズを向く。

「例えオーネストがオーネストになっていなかったとしても……いや、オーネストそのものがいなかったとしても、ヘスヘスは多分ベル君に手を差し伸べたさ。動機が何であれ、確かにヘスヘスはベル君という存在を助けようとしたんだ。そこに疑いを持つのはいけない……だろ?」

 ジョッキ10杯目の神酒を片手にニッと笑ったアズに、ヘスティアも笑った。

「それもそうだね
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ