18.なきむしオーネスト
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
皮膚を抉る生々しい切り傷が否応なしに男の命の温度を下げていく。
恐ろしい。この暴虐の権化のように常識を斬り裂く悪鬼が恐ろしい。
一体どのような経緯を経ればこんないかれた人間に出来上がるのか全く理解が出来ない。
「おグオッ……っ前ぇ!!こ、こんな真似して唯で済むと――!?」
「薄汚い大人の分際で俺の許可なく口を開いてんじゃ……ねぇよおッ!!」
「あぎゃあああああああッ!!あ、足がぁぁぁッ!!」
「ハァッ……ハァッ……俺の剣は!!俺が得た、俺の物だッ!!俺から奪う奴は絶対に許さねぇ……俺には力があるんだ!お前みたいな生きる価値もなく搾取するだけの屑を血染めにして奪い返す力がァッ!!」
太股を裂かれて情けない悲鳴を上げて地面に転がった男の鎖骨付近に、追撃の刃が突き刺さる。
「俺が塵なら、塵に負けたお前は何だ?……言ってみろよオイッ!!」
「ぁぎいいいいいいいいいいいッ!?やめてっ……ぐれぇッ!?ぎぎがああああああああッ!?」
修羅の形相で叫ぶ少年が万力のような力で剣をねじり、男の肩の肉がブチブチと音を立てて抉れる。まるで出来損ないのオルゴールを螺子で巻いたように、男から魂を削るような悲鳴が漏れた。夥しい血液を噴出しながら醜く泣き叫ぶ男は本能的に抵抗しようとに自分の斧を握ろうとするが、引き裂かれた掌が上手く斧を掴める筈もなく、ただ血で取っ手が滑るばかりだった。
オラリオの公衆の面前で繰り広げられる、耳を塞ぎたくなる悲鳴と猟奇的な光景。
誰も彼を止められない、誰も大男を助けようとしない。
何故なら、少年が振るう常軌を逸した暴力が恐ろしいから。
そう、それほどに――恐怖とは明瞭で、単純で、余りにも耐え難い。
「おい、何の悲鳴だ――ヒッ!?」
「だ、団長!?て、てめぇガキ!!団長になんてことを――!?」
「あああ、あああ!!た、助けてくれ!!このガキ正気じゃねぇ!!こ、ころ……殺されベブッッ!?」
「『大人』風情が『子供』の許可なく喋ってんじゃねぇ……!!」
少年のブーツの踵が大男の口を踏み潰し、バキバキと生々しい音が響いた。男の顔面に食い込んだ踵が、彼の永久歯を踏み折ったのだ。体のあちこちから血を噴出しながら顔面を血塗れに濡らす男は、踵と自分の歯、そして血によって窒息寸前になっていた。
少年は、その男がまるで踏みしめる石畳と同じであるかのように自然に、返り血を浴びた顔を後から来た男経都の方に向ける。
「――それで?お前らは俺に何の用だッ!?てめえらも俺に喧嘩を売りに来たってかァッ!?」
その咆哮にも似た鬼気迫る叫び声は――確かに、暴力の『恐怖』としてその場の大人たちの全身を雁字搦めに縛りつけた。
大男の拳は、少年に効いていなかったわけではない。現に少年の頭か
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ