18.なきむしオーネスト
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いのは貧しい本人の所為。子供が犯罪に手を染めるのは、非力で金も稼げない子供が悪いからだ。だから大男を止めて少年を助けようなどという奇特な人間はいなかった。
ただ一人、その光景を路地の木陰でヒヤヒヤしながら眺めている小さな背丈の神様を除いて。
(ああもう、何で子供相手にあんなにムキになれるかなぁ!今にも手を上げそうじゃないか……やっぱり早めに割って入って仲裁した方がいいよね?)
ヘスティア――天界の三大処女とも呼ばれるロリい女神の姿が、そこにあった。
その頃、ヘスティアは丁度家主のヘファイストスとイザコザを起こして彼女のホームを飛び出し、漸く自力でファミリアを作ろうと動き出したばかりの頃だった。勿論他人を助けるような金銭的余裕もないし、貧乏の神なんて貧乏の冒険者と同程度の価値しかないのがこのオラリオだ。奇異や好奇の目線はあれど、本気で助けてやろうなどとは考えない。
ヘスティアは弱きに同情する善人だが、救済する聖人ではない。
子供であっても罪には罰が与えられることを良く知っている。
そして、話の流れからして少年は恐らく、本当に剣を盗んでいるのだろう。だからヘスティアにはあの少年を助ける理由など無い。彼も年季が入った装備をしているということはどこかのファミリアに所属しているだろうからスカウト名目で、というのも難しい。つまり、助けても得る物は自己満足だけだ。
それでも、ヘスティアは最悪でも彼が暴力を振るわれるより前に仲裁して、盗品を返すことだけで許してもらえるよう説得しようと思っていた。でなければ最悪あの少年は謂れのない罪まで押し付けられて有り金を全て奪われたり、サンドバックにように暴力を受けてもおかしくはない。
できればあの大男に理性ある対応を求めたいが、その大男はとうとう子供の肩を乱暴に揺さぶり始めた。少年は俯いたまま揺さぶられ、悲鳴さえ上げられない。
「おぅい、黙ってんじゃ会話ができねぇだろぉ?なぁクソガキ、お前……その剣をいつ、どこで、どいやって手に入れたなんだぁ?ガキが手に入れられる剣じゃねえよなぁ。拾い物か?拾い物はいけねぇ、落とし主に届けるのがマナーって奴だろぉ?」
子供相手にそこまで凄む男がマナーを語るか……と、ヘスティア頭に血の昇った男に侮蔑の視線を向ける。
さぁ、次の少年の発言と男の応対次第では本格的に危ない。男はそれなりに下手に放っているが、これ以上自ら下手に出る事はしないだろう。この流れを逃せば、男の苛立ちや怒りは上がる一方。たとえあれが本当に少年の物だったとしても、渡さなければ暴力で無理矢理奪われる。
ヘスティアには、どうしてもそんな未来がそこにあると知りつつ見て見ぬふりは出来ない理由がある。
(『あの子』が生きてれば、ちょうどあれくらいの年齢……か……最
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