17.兎、幽霊の集いと出会う
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見えない。というか、醸し出されるエロスと触れることを躊躇う毒蜘蛛のような妖艶さにベルは結構顔を赤くした。横にヘスティアがいなければ色々と危なかった気がする。
『上臈蜘蛛』の二つ名を持つそうで、オーネストの話題だけ露骨に嬉しそうに乗ってくる。本人は多くを語らず静かに微笑んでいるが、初対面のベルでさえ彼女がオーネストを好いているのがよく分かる。
そして、自分の主神ヘスティア。
彼女にとってオーネストは『甥っ子』らしい。結構無茶をすることが多いらしく、よく心配させられるようだ。そしてこの『オーネストの館』に集う人々は、ファミリアの垣根を越えてオーネストと行動を共にする存在――巷で『ゴースト・ファミリア』と呼ばれる集団なんだそうだ。
もう何というか、現時点でベルの理解の範疇を越えた存在だ。
一つを問うと一つの答えと、二つの疑問が湧いて出る。そんな感じのやり取りの中で、ベルはオーネストという男が特異な存在でいる事だけは察することが出来た。
(それに沢山の女の人に慕われてるみたいだ……ということはっ!!まさか、僕の夢に近い場所に到達した存在なのか……!?)
だとしたら、ベルは一つだけ確認しなければならないことがある。
ベル・クラネルには夢がある。極めて俗物的で、単純すぎる憧れ――ダンジョンで英雄になってヒロインを救い、恋に落ちるというお伽話のような夢が。その夢を、ひょっとしたらオーネストは叶えているかもしれないのだから。
「ベル君や、オーネストに憧れるのは止めておきなよ?」
「えっ……?」
不意に――まるで心を読まれたように、アズの声がベルの思考を停止させた。
既に神酒ジョッキ9杯目に突入して尚顔に赤みが差しもしないアズは、何を考えているのか分からない笑みを浮かべた。
「オーネストと同じ生き方をすれば君は明日には死んでいる。それだけ過激で陰鬱で破滅的な方向に愚直に進んでしまう男なんだ。そんな捻くれ野郎にそれでも沢山の人が付いてくるのは、あいつの望む望まざるに関わらず――その姿が余りにも鮮烈だからだ」
「その直向きさ、愚かしさ、残酷さ………その全てが余りにも純粋で、心の欠けた部分を満たしていく。それは羨望とも違う、猛毒のような侵食なのよ……坊や」
「確かにな……真っ当に生きている人間には決して理解できない世界が、ここにある。あいつと一緒にいる理由は人によって違うと思うけど、それだけは確かだ」
「え、え、え?というか僕まだ何も言ってな……」
「……まぁ彼らの言い分は別にして、君はオーネストと同じになっちゃいけないよ」
かつて、ヘスティアが数年ぶりにオーネストと”初”対面した時を思い出したヘスティアは、酒の所為もあってか今日は少しばかり口が軽かった。
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