16.Remember Days
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ズにゃん呼ばわりまでしてくる。本当に俺が死神みたいな存在なら子供だってもっと警戒して近付かない筈だ。
だがしかし――ティオネちゃんが言っていたあの台詞がきっと本質を物語っているのだろう。曰く、「どんなに善人面しても貴方はやっぱり『告死天使』」……つまりはそういうことだ。
「生かした……ってのは少し違いますね。俺は死の在り方をより彼にとって好ましいものに変えただけです。なぜなら、人は死ぬべくして死ぬものですから」
人はいつか、どこかで、何らかの要因で死ぬ。終わりは最初から内包されており、結果が覆ることはない。だから主観的には助かったように見えても、実際には死ぬタイミングと理由が数十年ズレただけの話なのだ。もちろん期間が延びたことで変わる運命や生命もあるだろうが、それは『死』という一つの事実から見れば余りにも些細な出来事でしかない。
「だから、そこにワンクッション。死を受け入れる期間を先延ばしにして、まだ死が訪れない者がより良き死を迎え入れられるようにするんです。死が忌避すべきものではなく、迎えるべき決別だと納得させるための時間を設けただけですよ」
「アズライール……あんたが何言ってんのか、俺にはよく分からんよ……」
若者は話について行けないとばかりに頭を振った。
彼は冒険者ではない。オラリオには冒険者を諦めて商いを始める者や、ファミリアを引退して外の人と結婚したりする者も存在しており、彼は曽祖父の代から商売人だ。だから、命というものをそれほど実感したことがないのかもしれない。
だが、彼の母親は可笑しそうに俺へ微笑みかけた。
「昔、ある神様に似たような話を聞いたことがあるわ。神とは本来、死への恐怖を和らげるために人が求めた存在だって。……今の貴方、その時の神様にちょっと似てたわ。貴方が天使だからかしら?」
「よしてください。俺は天使なんかじゃない。ただ自分のやりたいことをやってるだけの自称冒険者ですよ……そんじゃ、俺はここいらで御暇します。養生してくださいね〜?」
にへら、と笑って俺は二人の家を後にした。リリにパクられて二代目になった漆黒の外套をはためかせて、今日はヘスヘスの所に来たっていう初の眷属くんに会いに行こうと考えながら。
アズライールは二人の名前も、家族構成も、見返りだとかそう言った話も一切しなかった。彼は罵声を浴びせられた男の親を散歩ついでに片手間で救い、去っていった。なんの見返りも求めずにやることだけをやって帰っていく姿は、まるで彼が定められた役目を果たしているかのようにも見える。
貴方の死は今ではなくもっと先に訪れるのだと忠告し、生と死の距離を伝える者。
人に『死』を連想させ、そしてそれが恐れるものではないと諭す、命の宣教師。
すなわち、死を
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