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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
16.Remember Days
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、彼は人間の死の運命を管理する役割を神に命ぜられたという。

 だから、人類を真に創造したのは神ではなくアズライール。
 人類とは、(すべか)らくアズライールの子供たちなのだ。

 ……とまぁここまでは聖書のアズライール。
 そしてここからは、勝手にその名を名乗ってるけどそんな大それたことは出来ない俺の話だ。

 俺は天使じゃないが、『死』を内包するだけあって『死』に関わることは人並み以上に理解できる。
 現在、俺は名前も知らない若者の母親の具合を確かめるという医者みたいなことをしていた。

 『告死天使』とか言われてるものだから時々子供や血気盛んな若者に「○○が苦しんでるのはお前の所為だ!」とか「○○が死んだのはお前の所為だ!」とか言われのない誹謗中傷を受ける。心にゆとりのある人は俺の気配に気付いてUターンするか遠くでヒソヒソするので、真正面から罵声を浴びせてくるのはだいたい悲しみに暮れている人である。

 命の出会いが喜びならば、死の離別は悲しみだ。そして全ての人がその悲しみを涙で全て流し切れる訳ではない。だから人は何度でも怒るし、泣く。それは自分ではどうにもできない爆発的な衝動であり、やめろと諭してやめられるものでは断じてない。

 なので俺はそれら一人一人に懇切丁寧に対応した。
 無碍にするのもなんだか気が引けるし、恨み節の対象が生きていれば助けられる時もある。マリネッタだって初めて会った時は「お前が全部いけないんだ!!」と泣きながら石を投擲してきた。後で事情を聞いて、面倒を見ている子供が風俗系ファミリアに拉致された事を聞いて、間一髪で救出したから今は仲良くできているのだ。

 という訳で――さあ、治療をしようか。

 十字架を背負った鎖塗れの魔人が、下手をしたら建物ごと斬り裂くのではないかというくらい巨大な大鎌を振り上げる。刃の先にいるのは、あらかじめ薬で眠らせた患者の安らかな姿。

「『死望忌願(デストルドウ)』よ、死神の大鎌(ネフェシュガズラ)で生命の理に反する者に死を齎せ!!」
『????? ????――!!』
「………って待て待て待て待て待て待て待てぇぇぇぇぇいッ!!」

 『死望忌願』を操る俺に患者である女性の息子さんが羽交い絞めにするように掴みかかってくる。その形相は必死そのもので、神に懇願するが如き遠慮に反して込められた意志は誰よりも熱い。しかし、何故治療の邪魔をするのだ。わけがわからないよ。

「いや治療ってかあんたそれ『今楽にしてやる』のパターンだからッ!!こ、殺さずに病状だけ改善してくれるって約束でしたよねぇ!?」
「いやぁ殺すよ?生かしておく意味もないし」
「あっれぇぇぇーーー!?最初に出くわしたときは大丈夫って言ってたじゃないですか!!まさか手遅れ!?手遅れなの
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