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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
16.Remember Days
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が薄いが、声に込められた冷たさと気迫だけいつも通りなので慌てて陣形を基に戻すと、リージュは再びオーネストとの会話にナチュラルに戻っていった。

「ちっ……シャキッと出来るんならそうしてりゃいいものを。いいか、『今の』俺はオーネストだ。次にそれ以外の名前を呼んだら永劫に無視する」
「分かったよアキくん!………あっ!?」
「…………………」
「あ、アキくぅん………」

 雨に濡れる子犬がクゥンと鳴くような切ない視線がオーネストの背中に浴びせられる。普段はこのようなうっかりミスをする彼女ではないのだが、どうも彼の前ではちょっぴり残念な子になってしまうようである。

「も、もう一回だけチャンス頂戴?お願いだよぉ……!」
「………もうアキでもいい。お前のドン臭さに訂正する気も失せた」
「アキくぅんっ!!」

 ――以降、18階層にたどり着くまでこの二人のコント染みた会話は延々と続いた。

 なお、試しにヴェルトールがオーネストを『アキくぅ〜ん?』とふざけて呼んでみたら投げナイフに追加してリージュの冷気まで飛んできたとか。以降『エピメテウス・ファミリア』及びヴェルトール・ドナ・ウォノは、反撃が恐ろしくてこの二人の微笑ましい光景をただ空気と化して聞いているしかなかった。

『結局二人はどのような関係だったのだ?拙者、てっきり深く暗い因縁があるものと思い込んでいたのだが………』
『………エングン呼んで来たらお礼に教えてもらえるヤクソクだったんだけど……ま、いっか♪オーネストもリージュも楽しそうだもん!やっぱり2人は似たものドーシね?』

 長い長い空白を埋めるにしては他愛のない会話をする二人の自然体な姿に、ドナたちは彼らの昔の関係を垣間見たという。

 しかし、人が一瞬に垣間見ることが出来る情報は余りにも不確実で断片的だ。
 二人の姿から見えるのは、本当に、過去のほんの一瞬でしかない。
 白く照らされた真実のカードの表――その裏で漆黒を深めるそれもまた、見えない真実。

 18層に着いた頃には、オーネストは『狂闘士』に、リージュは『酷氷姫』に、それぞれの仮面を被って真実を覆い隠していた。



 = =



 アズライールという天使には、いくつかの解釈の仕方がある。
 人間の肉体と魂を切り離す魂の選定者、あるいは断罪者、あるいは管理者。
 冥王星を司る者。天蠍宮の主。そして――人類の創造者。

 ある伝承曰く、神は天使たちに泥をこねて人を創造するように命じたという。
 天使たちは泥人形を多く作り、どうにか人という存在を創造しようとした。
 だが、泥人形に魂を宿して人と成せたのはアズライールだけだった。
 理由は単純明快で、アズライールが魂と肉体を分ける術を誰よりも知っていたからだ。
 以降
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