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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十七話  俘虜の事情と元帥の事情
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強い要請を受けている。」
――笹嶋中佐、約束を守ってくれたのか本当にあの人には世話になった。
 脳内で笹嶋に対する貸し借りに赤字を書き込む。
「水軍に〈帝国〉、随分と君も特別扱いを受けているな?」
「その特別扱いの対象は、私だけではなくこの第十一大隊です
――まぁ随分と人数が少ないですが」
「……そうだな、失礼」
栃沢も言葉を濁す。
互いに気まずい空気が漂う。
「今後の話をしたいのですが宜しいでしょうか」
「あぁ、仕事を始めよう」



同日 午後第二刻 東方辺境鎮定軍司令部官舎 司令官室 
帝国軍東方辺境鎮定軍総参謀長 クラウス・フォン・メレンティン


初老の参謀長は淡々と〈帝国〉東方辺境鎮定軍総司令官への報告を行う。
「猟兵二個連隊・砲兵一個旅団・その他独立部隊及び支援部隊、総勢二万二千名、鎮定軍の序列に加わりました。
〈皇国〉陸軍に破壊された兵站の再構築もこの支援部隊で完成します。
これにより、第21東方辺境猟兵師団の損害は充足し完全編成となります」

「それで?クラウス、今後は予定通り?」
陸軍元帥・東方辺境領姫 ユーリア・ド・ヴェルナ・ツアリツィナ・ロッシナは、豊かな金髪を弄りながら、普段の姿からは考えられないような無防備な甘えた声で尋ねる。

「真面目に聞いてくださいよ、姫。」
 ――幼い時から侍従武官としてお世話をしてきた身としては嬉しくもあるが・・・参謀長としては、困ったものだ。と言わざるを得ない。
 メレンティンが苦笑を浮かべるとがらりと表情を替えて促す。
「分かっている。参謀長、報告を続けなさい。」
 ――やれやれかなわないな。

「今後は第五東方辺境騎兵師団・第十五重猟兵師団を主力とした約十二万の増援を予定しています」
「他には?」
「必要とあらば、二個騎兵連隊、三個砲兵連隊が引き抜けます。
それを加算すれば支援部隊込みで約二十万になります。
東方、北方、両辺境の蛮族達に対する防衛を考えるとこれが限界です。」
 それでもこの〈皇国〉陸軍の常備兵力に匹敵する規模である。
「この国の蛮族どもの動向は?」
「一部で総反攻を企てている様です。」
「好都合じゃない。此方の動きの鈍さを勝手に補ってくれる」
ユーリアの楽観的な言動をメレンティンは窘める。
「殿下。あくまで一部ですよ。執政府が無能で無い限り潰されます」
「そうでは無いと?」
「殿下、何故攻め込む事になったのか忘れたのですか?」
 ――あまり敵を侮るのは危険ですよ、姫。
 良くない傾向だ、とメレンティンは警告する。
「民部省が煩く言っていたから進攻を始めたけど、
矢張り辺境の蛮族達を先に叩いて置くべきだったかしら。」
 姫が嘆息する。
「いえ、それはそれで問題があります。」
「輸
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