15.誰ガ為ノ虐殺
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ごッ……け、―――」
万力のように何の抵抗もなく、ばぎゃり、と首のパーツがまるごと握り潰された。
体を痙攣させながら絶命した男を握ったまま、オーネストは体を回転させて後続にいた男に鈍器のように叩きつける。
ぶおん、と音を立てて上から振り下ろされた男の死骸は、そのまま叩きつけられた男もろとも粉砕した。
男の死骸は別に握る必要はなく、ただ放り捨ててからもう一人を潰すのが面倒だからまとめて殴り潰しただけだった。頭蓋と頭蓋が割れて脳梁がオーネストの顔面まで跳ねるが――オーネストはやはり、顔色一つ変えない。
――恐らく、力自慢の冒険者の中には同じことを出来る者もいるだろう。だが、こんな殺害方法を実行できる異常な感性と、実行して尚も微塵の動揺すら見せない精神を併せ持っているのは、オラリオで彼一人しかいない。
かつて、アイズ・ヴァレンシュタインは彼の戦い方を「怖い」と言った。
それは核心をついているようで――実は真実の表層に刺さる言葉でしかない。
人間が人間を、極めて残虐かつ原始的な方法で、殺す。
それを息をするように実行できる存在を「怖い」の一言で済ます事を、誰が出来ようか。
その恐ろしさを極めて近くに、しかしどこか遠く感じていた男は、中身の惨殺死体の陰に隠れるような形で通り抜けた。
(抜けた!!さしもの貴様も『守る』ことは得意としていなかったらしいな、『狂闘士』!!)
今という好機を逃す理由は存在しない。
今、自分が迫っているあの地面に転がった小娘を、自らの体ごと火薬で吹き飛ばす。
それだけで仲間たちも自分も、為すべきことを成した証となる。
歓喜に打ち震えながら懐に手を入れて、体に巻き付けてあった爆弾の安全栓を引き抜き――気が付けば、視界を覆い尽くす壁が眼前に迫っていた。
「え?―――」
男は、訳も分からぬまま自ら体に巻き付けた爆薬で無駄に爆散して果てた。
男がなぜ死んだのかを知っている人間は、この世界でただ一人。
リージュの元に向かった男を『居合拳』で打ち抜いて壁――ではなく、天井近くに吹き飛ばしたオーネストは、うっとうしそうに髪をかき上げる。
「………ようやく片付いたか。退屈なことをやると無駄に時間が長く感じて鬱陶しい……鬱陶しい仕事は次からアズにやらせて俺は見物するか」
体に付着した肉片や血を簡単に払ったオーネストの意識は倒れ伏したリージュの方へと向かい、その背で絶命した男たちの記憶は覚える必要もないと忘れ去られた。
かくして男の死の真相を知る人間はこの世から完全に消滅し、男という存在も世界から完全に消えた。痕跡たる死体は粉々になり、魔石も砕け、もう魔物のそれとどう違うのか見分けがつかなかった。
最後に男が世界に残した
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