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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
15.誰ガ為ノ虐殺
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りにも常軌を逸した力だった。
 絶対的な殺戮者としての意識――孤高の威厳を塊になるまで濃縮したような心が、魔物を動かした。

 その膂力は巨人をも殴り殺し、気迫は天界を揺るがす――彼の暴れっぷりを知る者が語った血生臭い英雄譚。それが決して誇張でも何でもなく、端的な事実を告げているだけなのだと気づいた時には――すべては終わっていた。

 目の前に迫る20歳にも満たない男の体が巨大な怪物に見えるほどの、絶対的な絶望感。

 だからこそ――血で赤装束に染まってしまった者たちは全ての計画を最初に戻した。

「こうなれば、後ろで倒れた『酷氷姫』だけでも道連れにするッ!!」
「奴が魔法を使えるという情報はない。一人でいい、奴を潜り抜けてあの女に止めを刺せ!!」
「『彼女』の為!計画の為!!我等は今こそ肉の体を捨て去りぬ!!」

 戦いで数を減らしながらも、その人数は未だ十数名残っている。対して相手は『酷氷姫』ほど自由度の高い攻撃方法を持っている訳ではない。ならば、勝機は先ほど以上に存在する。
 死をも恐れぬ狂人の脳髄は、瞬時に最後の狂奔へ移った。

 その姿を認めたオーネストはつまらないものを見る目で溜息を吐く。

「残り人数は………11人か。まったくさっきの魔物といい、肉体も意志も脆弱過ぎる。紙を破っているようで実につまらん。とっとと片付けて今度こそ50階層くらいは行きたいものだ」
「明日の日程か。勝手に立てていろ。我らは貴様に用がないのだからなッ!!」

 有機的に絡み合って複雑な軌道を描きながら次々に地を駆ける男たちは、気絶して虫の息であるリージュへと殺到する――が。

「まずは3人」

 飛来する三つの光が虚空を駆ける。直後、男達の腹部に衝撃が奔った。

「――ガばァッ!?け、剣を……!?」

 オーネストの手に持った剣と荷物の中にあった予備の2本の剣が投擲され、正確無比に男たちの胴体を貫く。魔石を砕かれた3人はほぼ同時に絶命した。

「続いて5人」

 腰のベルトに仕込んであった5本の投げナイフが、ボウッ!!と音を立てて空を裂き、走っていた5名の腹に命中。その威力で『腹に風穴が空いた』。

「――ゴバァッ!!あ、あえ……あ……!?」
「何、が、起きて――」

 血と内臓を背後にぶちまけて絶命した彼らには、それが投げナイフによって生み出された傷だと最後まで気づけなかったろう。

「くそっ!!化け物めぇッ!!」
「人間を辞めておいて言うセリフがそれか。つくづく人間のメンタリティってのは成長がお嫌いのようだ」
「なぁッ!?いつの間に正面に――ごヴぇッ!?」

 悪態をついた男の首に、大蛇の顎の如く広げられたガントレットの指がめり込んだ。

「あ、がげげげげッ!!ぉあ、ああ、お
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