14.氷獄領域
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今の……『狂闘士』………!?」
「は……?おい、冗談だろ?こんな――稲穂を薙ぎ倒すような速度で魔物を殺せる人間なんている訳が……!!」
「で、でもよう!あれは『狂闘士』だったぜ!?」
「――いや、それが出来るから『狂闘士』ってことか………俺たちとじゃ、格が違うんだな」
どうして、その力が自分たちにないのか。
圧倒的な力の差を前に、全員が内心でひそかに同じことを悔いた。
だが、彼を目で追いかける暇はない。先ほどの嵐でフルオンの壁が崩れた。ホーネットもパニックを起こして動きが鈍っている。回復が望めない今、増殖するファンガスを叩くために今は攻めるしかない。同時に、全員が内心では一つのことを願っていた。
もしも、後方で団長が手古摺っているのならば――どうか彼にはそちらに手を貸してほしい、と。
先ほど、後方で巨大な爆発音があった。ファミリア達はその音が何なのかを確かめなかった。
理由は二つある。一つは魔物の隊列を前に後方確認をする余裕はなかったから。
そしてもう一つの理由は――リージュが「後ろはわたしがやる」と言い、その後指示がないからだ。
つまり、今、ファミリア達は決して隊列を崩してはいけないのだ。
やれと断言し、追う指示がないということは、つまりそれが最善の行動なのだ。
『戦争遊戯』に於いてただの一度の敗北も無い彼女の雄姿は、団員の誰もが目に焼き付けている。雪のように純白で、女王のように威厳に溢れ、ほかの誰よりも勇ましい団長の姿を信じている。そんな彼女が何も言わないのならば、最善なのだ。
――事実、彼らの考えは結果的に正しかった。
もしも爆発のタイミングで彼らが後ろを振り返れば、全身から血を垂れ流す団長の姿が目に映っただろう。そうなってしまえば辛うじて保たれていた指揮は崩壊し、オーネストが訪れる前に死人を出していた。最初から彼らは振り返ってはいけなかったのだ。
だが、それでも――彼らは心配だった。
最強だと信じているからこそ、最強でない自分たちのせいで彼女の華奢で美しい体に傷をつけてしまうのではないかと不安を覚えていた。
だから、彼らは例えその判断が間違っていたとしても――オーネストに後方を託して前に進んだ。
「攻城隊、構え!!次の突撃で突き崩せよおぉぉぉッ!!!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
限界を迎えつつある彼らの死力――火事場の馬鹿力を乗せた突撃鎗が一斉に突貫した。
――その、後方。未だ増殖を続ける変異ファンガスの後ろで。
『……リージュ、ダイジョウブよね?死んだりしてないよ、ね?』
「オーネストが助けるっつったんだから助か
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