14.氷獄領域
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、その全てがリージュただ一人の放った凍気で封じられている。
ただ、それを行う代償として彼女は相当な量の魔力を糧にする。合間を縫ってマジックポーションを呷ってはいるが、その消耗は既に看過できない段階へと迫りつつあった。恐らくは持ってあと十数分――いや、それだけならばまだいい。魔力は別として体力ならばまだ余裕はある。
だが、あちらはリージュと戦うことを前提に戦略を組んでいるためか、戦力を小出しにしてかなりギリギリの間合いで距離を取りつつ突破を図ってくる。魔力が切れれば一斉に迫り、リージュが切り伏せられる許容量を突破して魔物相手に悪戦苦闘するファミリア達を一斉に食い潰すだろう。
事ここに至って、仲間は足手まといだった。
何よりあの白装束――恐らく推定レベルは3〜4程度であることに加え、体に仕込んだ爆薬による特攻を仕掛けてくる。確実に詠唱を行う喉を潰さなければリージュとてただでは済まないのだ。命を捨てた人間爆弾に殺到されれば、全てを切り伏せるのは難しい。
(死兵――自分の死を織り込み済みで組み立てられた戦術。わたしだけが逃げに回れば命は助かるが、このまま事が運べばファミリアに確実な犠牲者が出る……!!)
ここまでの戦略。魔物化した肉体。
更に魔物を従え、変異種まで連れてくるという数と種類の優位。
このダンジョン内に魔物がほとんど発生していなかったのは、大量に集めた魔物を襲撃のためにどこかに伏せていたからだ。しかも、この『エピメテウス・ファミリア』の『酷氷姫』を確実に始末するために。
(まだなの――ドナ。それとも途中で連中に見つかって……駄目だ、今は弱気になるな。彼女を信じた私の判断を、今は信じるしかない)
もう状況は限りなく詰みに近い。
だが、乱戦が本格化する前にリージュは賭けをした。
旗色が悪くなった時点で、リージュはあることを思いついたのだ。それが、ドナに援軍を呼びに行かせることだった。彼女の存在を悟られないため、ダンジョンの壁を凍らせる際にわざと派手に氷雪をばらまき、その視界の悪さを利用して彼女に行かせた。
最初は共に戦うと言っていた彼女だったが、彼女一人の協力でこの場を乗り切れる可能性は限りなく低い。だから、時間がかかっても援軍を呼ぶように言い聞かせて何とか納得してもらった。
代償は高くついたが――この状況を乗り切れるなら安いもの。
この乱戦でも問題なく戦える戦闘能力を持ち、22階層まで短期間で来られるフットワークがあり、なおかつドナの言葉に最も耳を貸してくれそうな存在――『ゴースト・ファミリア』。
本当ならば彼らのような実態も得体も知れない存在に助けを求めるのは、秩序側に属するものとしては失格だ。それでも――自分の顔に泥を塗って部下が助かる
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