13.死者の望んだ戦争
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方向から凄まじいスピードで気配が近づいている。
一瞬敵かとも思ったが、その気配には覚えがある。
「おい、ヴェルトール。やんちゃ姫が戻ってきたらしいぞ」
「んがぁ〜……ぐごぉ〜……ふごっ、…………………………」
『むおっ!?主様の呼吸が止まった……これが噂の呼吸法、『武故級将郷軍』か!?」
「それは呼吸法でも何でもねぇよ……起きろオラァッ!!」
「げばふぅッ!?ねねね寝込みを襲うとは卑怯ナリよっ!?」
「何キャラだてめぇは……」
思いっきり横っ腹を蹴り飛ばしてみると、ヴェルトールは見事に呼吸を再開しつつ意識を覚醒させた。この男に思いやりは不要である。何故なら思いやることが面倒だし、する義理も理由もないからだ。
小さなうめき声をあげながら体を起こすヴェルトールだったが、その体に次なる試練が迫っていることに不幸にも彼は気づかなかった。――彼の体に、件のお姫様ことドナの空を切り裂く頭突きが迫っていたのである。
「んマスタぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
「おぶぼばぁッ!?馬鹿な、オーネストに蹴られた場所にピンポイントロケット頭突きダトォッ!?モウヤメルンダッ、俺のレバーが持たないから!!」
「そんなこと言ってるバアイじゃないの!!ヘンタイなの!!」
「変態………人形フェチの変質者か?」
「あ、ゴメン!タイヘンのマチガイだった!!……とっ、ともかくリージュ達がタイヘンなのよ!!」
焦るあまり大変な間違いをしてしまったドナの慌てぶりに何事かと驚くヴェルトールだったが、次の瞬間に顔色が変わる。
「リージュ達が『ぱすぱれーど』とかいうのに巻き込まれてタイヘンなの!!なんかスッゴい沢山のマモノとかブンレツするマモノがいーっぱい押し寄せて逃げられなくなってるの!!なんか白いヘンな人も暴れてるし………お願い、助けに行くのを手伝ってよマスター!!オーネストもお願い、リージュを助けてッ!!」
「―――………」
また、リージュの名を聞いた。
緊急事態に対する戦意が薄れるのを感じる。
同時に、心の中にある形のないわだかまりが膨張するのも、また同じように感じた。
今、わだかまりが増えたのは何故だろう。あいつを助けたくないから増えたのか、助けたいから増えたのか――助けたい?この、俺が?違う、そんなのはオーネストのやることではないし、考えることでもない。
自分で自分が観測できなくなっていくように、頭の中が揺らぐ。
俺は気に入らないものをたたきつぶす存在で、救う存在ではない。
俺の流儀に反する。
俺のやらないことだ。
そう、分かっているのに。
なのに俺の心が揺れるのは、何故だ。
こんなとき、アズライールならどう考えるだろうか――
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