13.死者の望んだ戦争
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れない者の目だ。
『………戦いは向いていない、って言っても貴方はダンジョンに行くのでしょうね』
『ああ、そうだ』
『………ごめんなさい』
『なんでアンタが謝る』
『………そう、ね』
そして彼女はいつもこう続けるのだ――それでも私は心配なの、と。
――あれだから、俺はあの人が苦手なんだ。
そう内心でぼやきながら、オーネストは剣の手入れを終えた。
ヘファイストスはこちらが戦いを止めないだろうと分かっていて尚、それでもこちらを止めようとする。それは『あの人』の遺した言葉のためであり、かつてあの人の家に足を運んで遊んだ『誰か』の面影であり、そして彼女自身が生来持ち合わせる直観の導き出した『彼は戦うべきではない』という確信があるからだ。
ヘスティアはまだいい。炉の神とは帰るべき場所の神だ。だから彼女は招き入れることはあっても、去る者の後ろ髪を引くことはしない。彼女もまたヘファイストスと同じではあるが、結論が微妙に異なっている。
ヘファイストスの答えが『諦めない』ならば、ヘスティアの答えは『次を待つ』だった。次とは、今までにない変化のきっかけ。北風と太陽で例えるならば太陽に近いが、訪れるかどうかもわからない未来を待っている。
ふと、自分がとりとめもなく昔ばかりを掘り返していることに気付き、うんざりした様にため息を漏らす。
(………あいつと会った所為か、余計なことばかり考える)
あいつと出会うといつもそうだ。嫌なことばかり思い出して、機嫌が悪くなる。あいつの言葉一つに、行動一つに、ひどいもどかしさを感じる。なのに現実はどうだ、それを吐露しなければ止めようともしない半端な自分がいる。
(俺は………俺は、オーネスト・ライアーだ。偽りの中でも曲げられない意志を貫き通す存在だ。なのに――俺は過去と未来のどちらに生きているんだ?過去が現在を作ったのに、何故過去から現在を切り離す事に躊躇う)
そういえば――ともう一度過去を振り返ると、そこには2年前に現れたもう一人の異端者がへらへら笑っていた。あいつと出会った頃も、多かれ少なかれ似たようなことで思い悩んでいたような気がする。なのに、あれが隣にいる時の俺はそんなことを考えていなかった。
今、俺の近くにいるのはヴェルトールとウォノだ。あいつではない。
その事実に、オーネストは内心で小さな落胆を感じずにはいられなかった。
あいつなら――俺に「答え」を教えてくれたのかもしれないのに。
「―――………?」
思考を一気に現実に引き戻したのは――微かに鼻腔を突く嗅ぎ慣れた臭いだった。
これは植物系の魔物特有の青臭く埃っぽい異臭。この階層では決して嗅ぐ機会のない筈のものだ。臭いの元を確認してみると――ちょうど奥の階層へ続く階段の
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