13.死者の望んだ戦争
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たないってこと』
『だから身を護る盾と鎧を持て――か?馬鹿馬鹿しい』
『真面目な話よ』
ハイポーションを使用しても尚完全には塞がらない傷を抱えてベッドに寝かされるオーネストに、眼帯の神は真剣な表情で告げた。
『いくら機動力確保のための軽量化って言っても限度があるでしょう。ガントレットに四肢を守る最低限のプロテクター、それに改造脚鎧だけなんて装備してないのと同じよ?』
『プロテクターも脚鎧も防御用じゃねえ、素手でやる時の為の武器だ。それに、その程度の軽装ならその辺にごろごろ転がってる』
『その辺に転がってる戦士ならそれでいいでしょうね。でもあなたは違う。砲弾のように敵陣に真正面から突っ込んで攻撃を真正面から浴びながら、それでも打倒せしめんと雄叫びをあげるあなたは違う。受け止めることが前提の無謀な戦いには、その無謀から身を護る鎧や盾が必要なことぐらいわかっているでしょ!?』
俺の戦い方も知らないくせに、とも思ったが、体と装備を見れば鍛冶屋には戦い方の想像がつくのだろう。俺の戦いを又聞きして情報を擦り合わせれば、後の光景は勝手に目に浮かぶ――そういうことだ。
この神にはいつも心配ばかりをかけている、のだろう。いつもいつも、こんな自殺者紛いのくそがきのために時間を割いて剣を精錬しているのだ。代金も馬鹿にならないだろうに、一度も料金を請求してきたこともなければ金も受け取らなかった。
それに負い目があるのかと言われれば違う。自らの戦い方にも生き方にも一片の曇りもない。
ただ、オーネストはヘファイストスを知っていて、ヘファイストスはオーネスト『と名乗る前』を知っている。だから、特別な感情は拭えなかった。何も信じないとあの日の夜にのたまったくせに、愚かしいことだ。
内心で自嘲しながら、オーネストは首を横に振った。
『堅牢な鎧も盾もデッドウェイトだ。下層の魔物の速度に対応できなくなる』
『それは、貴方が下層の魔物と戦えるほど強くないからよ――気付いているんでしょう?自分が想像以上に脆い存在だって』
『そっちこそ、気付いてるんだろ。鎧だの盾だの、そんな装備が俺に馴染まないであろうことを』
『………そう、ね』
鍛冶の神は、燃えるように赤い髪を弱弱しく揺らして悲しそうに瞼を閉じた。
一度、彼女から『不壊属性』の剣を手渡された。
驚くほど手に馴染まなかったので、生まれて初めて装備を彼女に突き返した。
彼女はどこかそれを予想していたように『やっぱりか』と一言漏らし、そのまま剣を抱えて工房へ戻ってしまった。今になって思えば、守りの究極系である『不壊属性』との根本的な相性の悪さに気付きつつも、あれで身を守ってほしかったのかもしれない。
彼女のそれは、あの時と同じ目だ。分かっていても、問わずにはいら
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