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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
13.死者の望んだ戦争
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「り、了解ッ!!」
「投射隊、詠唱準備!!」
「いつでもッ!!」
「遊撃隊、退路確保を!!」
「お任せあれ!!」

 振動は次第に大きく、力強く、まるで不吉を呼ぶ化け物が洞穴から這い出るかのように不気味に――『エピメテウス・ファミリア』の前にその醜悪な姿を現した。

「うっ………!?なんだ、あの数は!!」
「おい、群れの真正面!!人がいるぞ!!」
「襲われて逃げてきた……ってツラじゃないわね。テイムモンスター?」
「馬鹿言うな、数が多すぎる……!!」

 白い装束の何者かが引き連れるように現れた、この階層の生息魔物と微妙に一致しない存在が混ざった百鬼夜行。獰猛に唸り声をあげる異形の連隊は膨大な殺意と威圧感を撒き散らしながら真正面に迫る。
 白い装束の何者かは、まるで死人のように熱のない言葉で告げ――その手を前に翳した。

「神に組する愚か者どもよ――ここで同胞に貪られるがよい」

「――『怪物進呈(パスパレード)』だッ!!」

 誰が叫んだとも知れない悲鳴染みた叫び声が、その戦いの戦端となった。

 爪、牙、獲物を前にした歓喜の咆哮に立ち向かうため、戦士たちはそれぞれの武器に手をかける。
 未だかつて経験したことのない『悪』との、『本気の殺し合い』を始めるために。



 = =



 オーネストの握る剣は、一部の例外を除いて殆どがが鍛冶神ヘファイストスお手製の最上級品だ。
 耐久力も切れ味も通常の剣と比べて段違いに高く、その外装に至るまですべてが超一流の洗練された仕上がりになっている。事実、晒された刀身は一日手入れを怠ったにもかかわらず眩い煌めきを放っている。

「―――………」

 その剣を静かに砥ぎ、磨いていく。
 昔は安物を使っていたが、あっという間に折れて肝心な時に使い物にならないから使用をやめた。実用に耐えうるだけの剣をきっちり用意してくれる鍛冶屋は、今やこの界隈ではヘファイストス・ファミリアしかない。
 シユウ・ファミリアも多少は面倒を見てくれるが、あそこは「守り」の剣は得意でも「攻め」の剣では少々よその一流に劣る。どう使っても手に馴染まなかった。

 この剣に銘はない。
 何故なら、これは激しすぎる戦闘スタイルに耐えられずに次々折れていく使い捨てだからだ。普通、上位の冒険者にもなると世界に唯一つの専用剣を作ってもらうことも多い。そんな中でも上位冒険者のそれと遜色のない性能を誇る剣は――それでも、オーネストにとっては使い捨てに過ぎない。

 剣は心を映す鏡、脆い心で振るう剣は脆く崩れ去る。
 だが、自分の剣が折れる理由はそうではない、とヘファイストスは語った。



『あなたの余りに強固すぎる意志に、剣がついていけないのよ……文字通り、身が持
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