13.死者の望んだ戦争
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けるの?)
《そだねぇ〜……リージュって、オーネストに似てるからかな?》
進軍の足が、一瞬だけ止まりそうになった。
どうやら足音に混ざって周囲に会話は聞こえていないようだが、一瞬肝がひやりとした冷めた。
似ている――わたしと?それは違う筈だ。彼はわたしとは違う。わたしよりずっと凄くて、本当に強くて。
そして――わたしは加害者で、彼は被害者だ。
似ているはずがない。この世に悪があるならば、それはわたしのことなのだから。
(似て、ないよ)
《似てるよぉ。だって部屋で話したリージュ、アズと二人っきりの時のオーネストにちょっと似てたモン。たまにクーキを抜いてる割れかけのフーセンみたいだね》
(それでも、似てないよ)
《イアイケンの構え、オーネストとイッショだった》
(………似てるだけだよ)
《そーやって嫌なトコ隠そうとするのも、オーネストそっくり》
(……………そろそろ魔物が出ると思うから、また今度ね)
会話を無理やり断ち切らないと、叫んでしまいそうだった。
また、振り払われた手がじくじくと痛む。その痛みを誤魔化すように『鬼走村雨』を力いっぱい握りしめ、周囲の気配を探り続ける。
「隊長……おかしくありませんか?」
不意に、遊撃隊の隊長が声をあげた。
自らの不審を悟られたかとも思ったが、この状況下でそれは考え難い。
そして、リージュは先ほどから考えている懸念と彼の持つそれが同じではないかと推測する。
「………言ってみろ」
「はっ。その、既にお気づきとは思いますが、22階層に入ってから魔物との遭遇回数が極端に落ちています。壁などから一定数湧き続ける魔物がこうも少ないとなると――」
「何かがある、と言いたいのだろう?そんな事は先刻承知だ……」
ダンジョンで予想外の事態が発生するのはよくあることだが、異常事態というのはまず起きない。ダンジョン内に存在する危機をシステム的に当然に存在するものだと考えるならば、今の事態はシステムからかけ離れた状態だとも言える。
いや、それとも――システムに反しない方法で『何か』をしている『誰か』がいる?
《ねぇリージュ、今いい?実はさ………ちょっとお知らせあるんだけど》
(………言って)
《キノウにチラっとだけど、アズっていうトモダチがさ――『22階層で魔物人間に会った』って言ってた。イミはよく分かんなかったけど》
(魔物人間?それって―――)
何のこと、と聞こうとしたリージュは、静かに足を止めて耳を澄ます。
振動だ。どこかから振動が近づいてくる。それも一つ二つではない、まるで大挙を成して押し寄せるような巨大な振動だ。
まさか――と嫌な汗が頬を伝った。
「全隊、止まれ!!攻城隊、前へ出て突の陣形で警戒!!
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