12.ツインドール
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『ねぇ、アキくん……その技、わたしにも教えてよ!!』
『え……?リージュがこれやるの?』
『うん!その……できれば顔は止めて欲しいけど、パパとママを「お前らなんか全然戦えないから使えない」って虐める人がいてね……わたしまでよわっちいって馬鹿にしてくるの!だからちょっとでも強く見せたいの!』
『う〜ん……分かった、教える!でもリージュを殴るのは嫌だから動きだけね?上手く教えられないかもしれないけど………』
『いいよそんなの!アキくんが教えてくれるんならそれだけでも嬉しいもん!』
少年は、そんな少女の笑みにたじろいで頬を朱に染め、それを誤魔化すように声を張り上げた。
『……へ、変なの!俺には何言ってるか全然わかんなねぇや!えっと……ああ!そういえばさ!うちのファミリアでも同じように居合拳を覚えようとした人がいたんだけどさ――』
仲睦まじい二人の子供は、太陽が傾いて街に影が差すまで夢中でおしゃべりをしたり、時々技の練習をして遊んでいた。彼らのほかには、その頃のオラリオで同世代の子供がいなかった。だから喧嘩をしても用事があっても、遊ぶ相手はいつも同じだった。時々大人も遊びに付き合ってくれるが、定期的に来るのはぶくぶくに太ったギルドのエルフくらいだった。
ファミリア同士が子供を授かるというのは、この街ではとても難しいことだった。
子供を授かった女は当然ながら一時的に冒険者を続けられなくなるし、子育てを考えるならば更に続かなくなる。それどころか、男と共にファミリアを脱退して田舎に帰ることだってないわけではない。おまけにファミリアの子はそのファミリアの主神の子であるため親と揉めるし、他のファミリアとの間に子を授かれば更なる泥沼が待っている。
儲けを気にするにしても子の将来を憂うにしても、誰かにとって都合が悪い。子の誕生を素直に祝福するようなファミリアとは、それほど裕福なファミリアとも言える。
オラリオという街は、子供にとってそれほど寛容ではないのだ。
そんな中でも、わたしたちはとても仲の良い友達だった。
来る日も来る日も遊びほうけて、自慢話や嬉しかったことは全て共有した。
『へへっ!昨日パパがこんなに大きい竜の角を持って帰ったんだ!すごいだろ!』
『ほんと〜?すごいなぁ……うちのパパとママはいっつもホームでゴハン作ったりお掃除したりで冒険なんかしないんだよ?何で?って聞いたら、「あなたが産まれたから」だって!変なのっ!』
『………そっか。それはそれで、いい事だと思うよ。だって、いつだって甘えられるじゃないか。うちのパパは、忙しくてあんまり会えなから……』
『そういうものかな?』
『そうだよ』
『そうなのかなぁ〜?』
『きっとそうだよ!』
わたしたちは、とても仲の良い友達だった
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