12.ツインドール
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、たった2年でオーネストの心の城壁の上を鼻歌交じりに歩くほどには近しくなった。その不思議な人徳は不思議と他人の心を開き、『自分』という存在を剥き出しにする。
いつか屋敷に連れ込んだ小人族の少女がこっそりアズのコートをちょろまかして匂いを嗅いでいた光景をそっと見なかったことにした優しいヴェルトールとしては、あれはそのような不思議な存在に見える。死神のくせに幼女に好かれるのは、同じく心が透き通っているからだ。……多分だが。
一人で野宿の準備を進めているヴェルトールは、勝手に食事を済ませて眠りについた問題児を見つめる。オーネストは普段は無表情、何かがあると仏頂面、そして戦いでは殺意むき出しの獣のような表情をしている。でも、寝るときだけは子供のように安らかだった。
「今頃、夢の中のお前はどんな光景を見てるのかね………願わくば、幸せな夢であってほしいところだ」
そう呟いて、ヴェルトールは自らの戦闘方法である自立人形を背負っていたカバンから出してメンテしようとし――その中身がカラになっていることに気付いた。よく見ると奥には置手紙があり、『朝には帰ります ドナとウォノより』と書いてあった。
「……さては『酷氷姫』に会いに行ったな?あのイタズラ人形たちめ……好奇心旺盛なのはいいけど、もうちょっと落ち着きを………落ち着きのない俺に似たんだとしたら無理かなぁ?」
明日になっても戻らなかったら迎えに行くか――とつぶやいたヴェルトールは薪に火をつけて新鮮魔物肉を炙り始めた。………18階層では「食える魔物の肉」は冒険者御用達の食事である。理由は言わずもがな、地上への直通ルートがない18階層で販売されるものが何から何まで高すぎるからだ。
この裏技みたいな食事方法が広まったのは……まぁ、数年前に某問題児がその方法を確立して18階層に1か月近く滞在したのが風の噂で広まったせいだったりする。
= =
『エピメテウス・ファミリア』の新人遠征は厳しく、精神的な脱落者を出すこともよくある。
死人は出ないが、冒険者として未熟な心が根を上げて前線に不適格とされると、地上に戻るまでサポーターをやらされるというルールも存在する。
夢に手が届かずに涙を呑む者が集団の中に現れたときの空気の悪さは凄まじく、しかも挫折した者もダンジョンを出るまでは集団行動しなければならないために余計に空気が悪くなる。食堂での私語は許可されているが、常に決して明るいものとは言い難い。
しかし、今日の空気の悪さは濁りこそあれその方向性は一方のみに向けて流れていた。
「なぁ……団長、どうしちまったんだろうな。あれから宿の部屋に籠りっきりだよ」
「やっぱり『狂闘士』のせいか……?まさかアイツ、団長に手ぇ
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